富裕層と云う言葉が、日常的にわが国で使われるようになって、まだ10年と経たない。
バブルが崩壊した1990年代半ばに、欧米の金融機関が大挙してわが国に乗り込んで来た時、まず最初に手をつけたのが資産家のリスト作りだった。
資産家はいつしか富裕層と名称を代え、それまでわが国の代表的な金持ち層だった地主の資産価値がデフレでどんどん下がるのに代わって、 IT経営者やファンド関係者が富裕層を代表する金持ちとなった。
ただ以前と違って、現在は個人情報に関する保護処置が取られているため、税務署から勝手に高額納税者リストを入手するような手荒なことは出来なくなった。
そのため、銀行も、証券会社も、富裕層のリスト作りから、取引開始まで、必死の営業展開を行っている。これは、金融・証券に限らず、百貨店も、旅行会社も、不動産会社も、喉から手が出るほど欲しい、富裕層リストである。
03年に不動産業を起業した34歳の男性は、2年間に8人の富裕層顧客と取引を行うようになり、順調に業容を拡大させている。
これから起業をしようとする人が、いきなり富裕層顧客に近づくことは絶対に難しい。しかし、現在事業を大きくするために苦労している IT経営者なら、簡単に近づくことが出来る。1年後、2年後を見据えての先物買いも、起業をする人間にとっては大切な知恵だ。