17年10月のオーストリア下院選では、31歳の国民党党首が次期首相になることが決まり、世界から大きな驚きをもって迎えられています。今、世界政治は大きな変化のうねりの中にあります。
それは、世界主要国の首脳の顔ぶれをみるとはっきりします。現在、世界政治の中心にいるのはドイツのメルケル首相。彼女はドイツ初の女性の首相で、既に就任して12年目になろうとしています。
今年就任したフランスのマクロン大統領は39歳。イギリスのメイ首相は女性。カナダのトルドー首相は45歳。米国のトランプ大統領にしても、経済界から大統領になった異色の政治家。
世界を見渡し、古くからの中年で政治畑だけの男性指導者というと、中国の習近平主席、ロシアのプーチン大統領、イタリアのジェンテローニ首相、そして日本の安倍首相しかいないのが少数派です。
日本は政治家にしろ、経済人にしろ、人を育てる仕組みがほとんど確立されておらず、唯一それらしき仕組みは、親の職業を子供が継ぐといった程度のことです。世襲議員の多いことは、政治全体に硬直化を生んでいます。
今回の選挙でもほとんど問題視されませんが、議員に立候補するだけでも小選挙区で300万円の供託金を収める必要があります。世界でこんな高額の制度があるのは日本と韓国と言われます。
イギリスでは、親の選挙地盤から子が立候補することを禁止しているようです。選挙で立候補する自由は誰にでもありますから、世襲が悪いことではありません。ただ、親からの地盤を引き継いで立候補するなら、当然相続税を支払う当たり前の制度は作るべきです。
一方、世襲とは対極に位置する起業する人に対して、制度上で支援する方法はいくらでもあります。既存の企業ばかりに支援して、新たな付加価値や雇用を生む起業に対し、冷たいのが今のこの国の制度です。
選挙は、国民が政治に対し、イエス、ノーを主張できる唯一の制度です。今回の総選挙では、最善の候補者がいないとしても、次善の人を探して投票することでしっかり主張するべきです。
【ひと言】
後10年もすると、日本からノーベル賞受賞者を出すのは難しいと言われるほど、この国の大学の研究施設は設備も研究者もお粗末な環境になっています。日産や神戸製鋼所の不正を持ち出すまでもなく、大企業も古いビジネスばかりでインチキがまかり通っています。その元凶が政治にあることは、多くの人が薄々気付いていることです。インチキにかけてはプロ級の人が多いのが残念ながら政治の世界です。