世界は心配されていたトランプ大統領の暴走が始まり、とても不安定な状態に入りつつあります。エルサレムへの米国大使館移転は、中東の火薬庫に火を放つようなもの。
日本にとって影響が大きいのは、米国税制改革によって連邦法人税率が35%から20%へと引き下げられる点。他の税も勘案した実効税率では、40%から27%へと約13%もの大幅減税が実行されます。
同時に、米国企業が保有する海外資産を国内に移させるため、原則として還流する資金は非課税します。他方、外国から米国向けの輸出に関しては、関税の引き上げが検討されます。
トランプ大統領によるこれらの政策が実現しますと、世界のマネーの流れは大きく変わることが予想されます。多額の資金が米国内に留まり、これまで米国向け輸出で潤っていた国の収支が厳しくなります。
国際的マネーの流れの変調で思い出すのは、1997年に起こったアジア通貨危機です。タイ、韓国、インドネシアなど米国向け輸出で成長した国々では、自国通貨の下落による財政不安と多くの企業倒産が発生しました。
日本経済も、これらアジア諸国や企業への融資が焦げ付き大きな打撃をうけたのが20年前のこと。今後、米国が強気の経済政策を強行しますと、日本にこれまでにない大打撃になります。
今、わが国経済にとって最も恐れるのは、日本から資金が海外に流出することです。今回のトランプ減税は、米国企業が海外に保有している2兆6千億ドル(291兆円)を米国内に戻し、経済を活性化させることが目的です。
米大使館のエルサレム移転と同様、米国の長年の課題解決を実施することがトランプ大統領の公約です。わたしの考える予測が杞憂に終わるとよいのですが、こればかりはどうなるか分かりません。
一つ忘れてはいけないのは、日本の現在の長期金利である0.050%台は世界史に残る異常な低金利で、いつまでもこの金利状態で国の財政の安定を保とうとする方が、異常な政策であることは確かです。
【ひと言】
異常な状態も長く続くと、それが普通の状態と思えてくるから不思議です。日本は好景気が続きといいますが、膨大が額の国債発行を抜きに今の好景気は語れません。世界に異変が発生した時に、この異常な状態に気付くようでは日本の首相は務まっても、企業経営者を長く続けることはできません。