日経新聞7月21日朝刊のトップの見出しは、「日本勢 国際M&Aの主役」でした。18年1~6月期の合併・買収の金額の比率が、欧州を抜いて米国46%に次ぐ29%のシェアを占めるというもの。
大企業の内部留保は巨額の資金が積みあがっていますから、投資家からはこの資金を配当に回すよう迫られています。何とか次の時代のために使うとなると、自社のビジネスを有利に展開するためのM&Aは恰好の投資先になります。
ただ、現在に似たような状況は今から20年前にも起こっています。バブル経済の最終版1990年前後です。三菱地所がNYのロックフェラーセンターを買収、NTTドコモがAT&Tワイヤレスに資本参加した時期。
この時期に行ったM&Aは、日本企業の経営能力不足によってその大半が失敗しました。自社の企業戦略の必要性から派生したM&Aではなく、有り余った資金を消化するためのM&Aですから結果は自ずと知れます。
あれから20年、世界経済の潮流は米国の金利上昇に引っ張られて、世界的企業の多くはその結果に起こるドル不足の影響に身構えています。既に、新興国の中にはIMFからの支援を必要とする国も出始めています。
国際M&Aというと、大手企業だけの話と受け止められやすいですが、その影響は中小企業にも間違いなく及んできます。現実にドル不足が顕在化しますと、次第に貿易の取引量が減少し不況色が濃くなります。
日ごろの経営判断にも、このような状況は影響を与えるはずです。日本の場合は、株高相場にしろ、金利動向にしろ、政府の意思を色濃く反映した官製相場が大手を振るっていますから、不況には極端に弱い体質です。
世界経済が変調をきたしたとき、このような官製相場はいち早く反応します。投資家や金融関係者自身が、このような相場の弱さをよく知っています。最後の頼りとする国家財政が、膨大な赤字で身動きが取れなくなっていますから。
【ひと言】
わが国では、08年9月リーマンショックの発生時に、「日本への影響は小さい」と発言して混乱の種のなったのが当時の麻生首相。今回、確認の意味でこの発言をネット上で調べたくてウイキペディアを調べてみたら、すっぽりこの時期の記事は抜けていました。誰から削除したのでしょうが、ネット記事を書き直しをしたり、削除して過去を消せるものなのでしょうか。