起業準備をここまで徹底してすると

　日本経済新聞夕刊の人物連載　人間発見に「がんこフードサービス」会長の小嶋淳司（こじまあつし）さんが８月１日から掲載されています。第一回の１日には、小嶋さんの起業準備の話が載っていて、起業する人には大変参考になると思います。

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　大学生の時、３０歳までに起業することを決め、そのころから飲食業での開業を目指していたと言います。そのため、お金があると食い倒れの街を何軒もはしごしていたようです。朝は卸売市場に出かけて食材の卸値をメモ、店のメニューの値段と比べてみて、利幅を計算しています。

　繁盛店の仕入原価が知りたくて、店に肉や野菜が届く時間を見張っていて盗み聞きしたり、店の外のガスメーターから光熱費を調べるようなこともしていました。定食屋やうどん屋、すし屋など、５０店以上を調べて業態別の損益計算書にまとめて、業種選びの参考にしています。

　そんな中から、客単価の断トツに高いすし屋を選びました。すしは味付けが簡単で、修行期間も短く済むと考えたようです。大学を出てからは、まず高級すし店で働き、その後は屋台のすし屋に移って、魚のさばき方や仕入れの値動きを学びます。

　２８歳になって４坪半（約１５平方メートル）の一号店を大阪・十三に開業しますが、このとき価格を紙に張り出して定価制にしました。それまで、すし屋の価格は、板前さんの頭の中で決めるのが一般的です。すし屋の支払いと言うと、幾らになるのかハラハラしたものです。

　わたしは初めて知りましたが、小嶋さんはすし屋のオープン価格制を初めて導入した人だそうです。それにしても、店舗開業にあたって大変な情報収集をして起業準備をしています。現代は情報が多く公表されていて、ここまで苦労することはありません。ただ、このようなマーケティングを通して、業界の裏も表も知ることが、目に見えない力となります。

【余談】
　わたしの経験では、比較的若い人は徹底した事前のマーケティングを行います。逆に年齢が高くなりますと、既に知った気分になっていて、事前調査にはあまり真剣ではないようです。気をつけないといけないのは、今はどこの業界も変化が早く激しくなっています。古い情報にしがみ付いていますと、大きな誤りを犯すことがあります。起業の時は、真摯にビジネスと向き合うことが大切です