「人げん万ざい」、「ラー戦場」、「一凛」、「大地よ水よ人よ」、「俺のハンバーグ山本」と、名前を上げているときりがないが、ラーメン、焼き鳥、寿司などの飲食店チェーンを展開するムジャキフーズの全国に散らばった店名の一部である。
これまでチェーン店を全国に展開する外食ビジネスでは、米国のシステムをそのまま直輸入して、本部が店舗を一括統制する方式で同一メニュー、同一価格、同一スタイルが定番だった。特にフランチャイズ・チェーンは、店名のブランド力と経営ノウハウが本部に加盟店を引きつける源泉であるところから、店名を統一しないチェーンなど絶対に考えられないことだ。
現在、ムジャキフーズが全国で運営する46店舗のなか39店舗は、店長の意向に沿ったカタチの店舗設計、運営を行っている。従来の画一的なチェーン展開から一線を画し、地元住民のニーズに店舗運営を合わせることで集客力アップを続けている。
大都市圏から地方の小都市まで、似たり寄ったりのチェーン店が幅を利かせているわが国の外食ビジネスは、ほとんどの店舗が壁にぶちあっている。開店1年目をピークに売上げはジリ貧状態。新機軸を打ち出したくても、フランチャイズでは本部が応じてくれない、独立店はノウハウがない。結局、駅前でティッシュを配るほかに、営業展開が見出せないでいる。
店長の個性を第一に営業展開を試みるムジャキフーズ方式は、外食ビジネスの新しい方向性として興味深い。外食ビジネスで起業を考える人にとっても、今の時代の新規性を知る上で、格好の教材になりそうだ。