11月、Sさんに会った時、彼の姿をまともに正視できませんでした。まだ43歳の働き盛りなのに、腰を大きく曲げてやっと歩く姿は、まるで老人のように見えたからです。
わたしの頭を掠めたのは、今から10数年前に会社勤めをしていた時代の自分の姿です。実は、わたしはサラリーマン時代、年に何度か襲われる激しい腰痛に悩まされ、自立起業するきっかけだったからです。
わたしの場合は、腰椎椎間板ヘルニアが原因で歩くこともままならなくなりました。Sさんは洋菓子店を開業して2年目、最も忙しいクリスマスシーズンを前にして腰痛がでました。
ご夫婦で切り盛りする仕事が忙しく、病院よりも手っ取り早い整骨院に通って、腰を騙しだまし仕事をしていました。わたしの経験から、急性の場合は整骨院では治らないことが多いので、病院で診てもらうことを勧めていました。
やっと行った病院の診断では、年内は痛みは取れないと診断されたといいます。わたしは会社を退職して直ぐに手術をして痛みから解放されています。Sさんは、毎日の仕事が休めなく手術は無理でした。
仕事の相談もそこそこに、この腰の痛みをどうするかそちらばかりが目の前の課題です。Sさんは職人気質で性格が律儀、今罹っている医師に全幅の信頼を寄せていて、他の医師の意見を聞くことには否定的です。
ただ、わたしにも経験がありますが、自分の身体は自分の判断で守るしかありません。医師は何かとアドバイスはしますが、3分や5分の診断の時に経験に基づく直観で考えるだけで、一人に深く考えてくれるわけではありません。
その後、やっと別の診療所に行くことにして、そこで初めて病名が椎間板ヘルニアと診断されました。わたしと同じ病気で、腰の背骨が横に曲がっているようです。わたしの場合の猫背に曲がっているのとは違う曲がり方です。
その後、手術をしないで治療だけで腰はピンと見違えるほど伸びるようになりました。仕事も、何とか12月のクリスマスに間に合って、最盛期を無事に乗り切りました。
軽い腰痛でも、その診断を間違えますと一生腰が曲がるとか、杖なしには歩けなくなる人がいます。こればっかりは事業と同じで、本人の判断次第で最悪にも、最良のケースにもなります。ポイントは、複数の人の意見を聞くことではないかと思っています。
【ひと言】
最近は、人がどのようなプロセスで判断をするか大変興味をもっています。直観で決める人と熟考する人。これまでの経験則を照らし合わせて考える人。自分のひいき目に考えて判断する人。この4つがポイントになります。あなたの考え方も一度整理してみては。何気ない判断なのに、そこにはその人の長い蓄積が反映されているはずです。そして、その判断が人生の行方を左右しています。