「今年も財政は大丈夫でしたね」 日ごろから、わが国の財政状態に危機感を訴えているわたしは、こんな嫌味を言われることがあります。メールでも、書いてよこす人がいます。
財政が不安定になるのは、景気の風向きが向かい風の時。今のように、世界中に追い風が吹いている時には、特別な事情がない限りいきなり金利が上昇したり、税収が不足するようなことはありません。
ただ、世界の景気が良好な時は、その次の展開として後退が始まるときでもあります。2000年、05年06年は今と同じように米国が好調でしたが、その後に大きな景気後退が起こり日本も大変な目に遭いました。
これまでの過去の日本と事情が違うのは、政策金利をマイナスにまで下げていて、これ以上は景気刺激を行う余地がないこと。日銀も大量の国債を抱えて、もうこれ以上は引き受けが難しくなっています。
日銀がいくらでもお金を刷ることで、財政は今後も大丈夫と自信満々に発言する人がいます。仮に国内経済は大丈夫としても、外国政府や企業は紙きれに近い紙幣では相手にしてくれません。
貨幣価値が大きく下がりますと、国民はたいへんな輸入物価高に見舞われます。マイナス金利、日銀の国債大量保有、政府の多額の借金など、円の価値が下がることばかりを続けていると日本のブランド価値が下がります。
怖いのは、このような歴史的汚点となるような金融政策を続けていると、日本国民の生活はますます困窮すること。また、異常事態が次々に起こっていることで、異常であることの感覚が麻痺することです。
太平洋戦争に突き進むきっかけも、世界恐慌で大きなダメージを受けた後に大凶作が続き、軍国主義へと進んだためです。政権維持のために無理な金融政策を進めていると、戦前の悲劇と同じことを繰り返すことになります。
人間心理は、将来の幸福よりも現在を重視するバイアス(ひいき目)が働きます。ただ、志の高い起業家には、冷静にわが国の現状を分析して、自分の事業に役立つ道を見つけてもらいたいものです。
【ひと言】
敗戦後、ドイツなどと違い日本は、国民300万人以上が亡くなった先の戦争が何故起こったか、どのような結果を招いたかなど、整理がまったく済んでいません。そのため日本国憲法以外には、わが国が戦争を再度起こさないための歯止めはありません。戦争は二度と嫌という人がいる反面、今度は負けまいとする軍国主義者もいますからややっこしいです。ビジネス同様に複雑です。