先日、アマゾンが発表したビジネス書大賞2017は『サピエンス全史』です。「なぜ我々はこのような世界に生きているのか? ホモ・サピエンスの歴史を俯瞰することで現代世界を鋭く抉る世界的ベストセラー」とあります。
わたしからしますと、ビジネスに関連するノウハウものをビジネス書とイメージしていますから、肩すかしをくらった気持ちの内容です。
準大賞も『ライフ・シフト』~100年時代の人生戦略~ですから、ビジネスの内容がすっかり変わってしまったかと思うほど、ビジネス書が変貌を遂げています。
現在、旧来型のビジネス書はすっかり売れなくなっています。出版社からは数は減っていますが、毎月そこそこのビジネス書は売り出されていますが、そのほとんどがベストセーラーになることはありません。
米国では、07年にフィリップ・ローゼンツヴァイク著『ハロー効果』出版され、たいへんな話題になりました。企業経営での成功談や成功企業と一般企業との比較検証をした本がターゲットがです。
この2種類のテーマを取り扱うビジネス本は、経営者の個性や経営手法が業績に及ぼす影響を誇張していて、ほとんど他人のビジネスには役に立たないと結論づけています。
心理学でいう「ハロー効果」とは、成功している人のやることは全てよいこと、失敗した人のは悪いと色眼鏡で見る心理です。ビジネスはそんなに単純ではありませんが、単純化することで誰でも成功できるような錯覚する気持ちを利用します。
このような米国の動きが、日本の出版界にも影響を及ぼしているのかも知れません。最近、よく「起業準備をはじめたいけれど、どんな本を読むとよいですか」と聞かれることが増えました。
日本は周辺国と比べ、企業経営に対する関心が低い国です。以前は、米国大学のMBA(経営学修士)で学ぶ人がそこそこいましたが、ここ5年ほどは、中国、韓国、台湾よりも日本の学生は極端に少ないようです。
経営の基礎を学ばずに起業するということは、泳げない人を海に放り投げ、苦し紛れで泳ぎを覚えさせる、昔ながらの起業スタイルが今も個人レベルでは行われています。
特に、起業する人でも、起業家を育てる教育ビジネスでも、自信過剰の人ほど人気を集める傾向があります。これも錯覚の一種ですが、安易に信用するのは危険です。起業を軌道に乗せるのは、自信だけで何とかなるほど簡単ではありません。
【ひと言】
現在、医療の効果に関する情報ではよく、新薬を実験投与して「30%の人に改善が見られた」というカタチのニュースがよく流れます。世界的に実施が進められている根拠に基づく医療情報です。このスタイルがモデルとなって、心理や政策の分野で普及がはじまっています。ビジネスにおいても、根拠に基づく情報を利用する時代が始まっています。