現在の起業環境でいいますと、IT系ベンチャーでの起業に対しては、多額の資金が大手企業から投入されています。特に、金融ビジネス関連のフィンテックベンチャーでは狂乱状態といえるほど、資金が集まります。
これほど潤沢な資金がありながら、わが国でも世界でもフィンテックベンチャーで成功している会社は1割にも達しません。大半のベンチャー企業は日の目を見ずに失敗しています。
ただ、投資する側の大手企業も投資を受けるベンチャーも、1回2回の起業失敗は織り込み済みです。例え失敗しても、そこで積み重なる経験と知識と技術は、確実に次につながることを計算に入れています。
何かこの積み重ねは、司法試験を何度も受けては落ち続ける司法浪人に似ています。ベンチャー起業家の中には、現役の銀行員よりも金融業務の一部分野では、精通しているといわれる人がいるほどです。
フィンテックばかりではないですが、日本では起業するとき一人の起業家が全てを取り仕切るケースが多いです。これは、技術系ビジネスの全般にいえることですが、技術開発から管理業務まで全てを引き受ける起業家です。
ビジネスが動き出す起業と、車が動き出す駆動とは似ています。どちらにも、走りだすアクセルとその動きを止めるブレーキとが揃わないと、路上や市場を自在に動くことは無理です。
ところが、スタートしたビジネス全般を引き受け一人で取りひきる起業家は、ブレーキのないアクセルだけの車になりがちです。安心な一本道ですと何とかなりそうですが、路上が混雑した途端に事故に遭うのは目に見えています。
ここでいう技術系ビジネスとはIT技術ばかりではありません。レストランや和食の飲食業、メカを作る製造業、技巧が問われる建築など、一定の以上の技術を必要するビジネス全般での話です。
現代の起業は、初期投資が少なく、時間もかからず、少ない人数で立ち上げることが可能です。ただ、起業のための技術は以前に比較しますと、格段にレベルは高くなっています。
一人で全てを背負っていますと、間違いなく起業が失敗する原因になります。起業する早い段階からアクセル役とブレーキ役とを分け、事業運営のバランスを取りながら起業を考えてみるべきです。
【ひと言】
都銀をはじめとして、商社や研究所などはこぞってフィンテックベンチャーに多額の投資をしています。過って、これほどベンチャー企業に対して資金が集まることは過去になかったと思われます。金融機関はマイナス金利が導入され、日増しに経営が厳しくなっていることが背景にあります。これまでも、これからも、景気が悪くなるとベンチャーや起業に対する期待はますます高くなりそうです。
