10年以上付き合いのある電子部品製造の社長と話をしていたとき、この2、3年続く好調過ぎる自社の事業に、「漠然とした不安」を感じて仕方がないと吐露してくれました。
現在、この会社に限らずわが国で好業績の会社は、5割とも6割と言われます。人間好調な状態に身を置きますと、この状態がいつまでも続くと思い込みがちです。
病気の人はいつまでも病気が続くと思い、金銭に困っている人はいつまでも続くと思います。ただ、世の中そんなに単純ではないのでは。上り坂のときがあれば、下り坂のときもありますし、晴れの日がある代わりに雨があるのと同じです。
つい一月、二月前までは圧倒的に支持を集めた安倍内閣が、危機的支持率と言われる30%台まで下落しました。これまでは思想は別にしても、人気にあやかり安倍氏を支持してきた自民党議員が、選挙で勝てないと思うと、見捨てます。
経営者には欠かせない能力の一つに「振り返り」があります。組織を運営するためには、常に自分の判断が正しかったどうか、自問する必要があるからです。また、従業員やお客さんの何気ない一言に、大きなヒントとなることも多いです。
今は、大不況に遭遇した過去を「振り返る」人が多いです。日本の場合、多くの場合は97、98年の世界的な金融危機のときと、08年のリーマンショックの2度程度です。
人生において何度も経験できることではないですが、その時に客観的に事態を見据え冷静に判断ができるか。自分の生き残ることばかりを考え、経営者として失敗するか、大きな分かれ目です。
人間の発想は、好調なときには次の好調な展開を、不調なときには次も不調なことばかりを考えがちです。好調から不調の到来を予測ができ、そのための準備のできる人だけが、大きなチャンスをものにできる人です。
【ひと言】
後世に名前を残している経営者は、そのほとんどの人が不況から会社を立ち直らせた人です。好調のときに、いくら事業規模を大きくしても自社内はともかく、社会からは評価されません。そのためには、いち早く不況到来を察知し、次の展開を考えられる人だけが立ち直りのきっかけに気付ける人。息を潜めて周囲の変化に注視してください。