わが国では、フィンテックなどIT系ビジネスを除くと、起業する人が目指す業種にはばらつきがあります。最近は、決して似たような業種に集中することはあまりなくなりました。
スルガ銀行が起業向け融資を一社で引き受けていた女性向けシェアハウスのように、一方的情報だけに偏よる起業はどうも大きな落とし穴があるような気がします。
そんななか、過去5年間で調査可能な民間資格を取得した業者数が16倍以上に達した業界があります。孤独死した人の自宅の清掃、消毒、遺品整理を手掛ける「特殊清掃業」です。
この業界で民間資格の検定試験を行っている「事件現場特殊清掃センター」によりますと、発足初年の13年には326社だった資格取得会社が、17年末には5269社にまで増えています。
わが国の高齢化が進んでいることにより亡くなる人が増え続け、死後の遺品整理をしてもらえない人も急増しています。多くの依頼は、遺族や住宅所有者からですが、自治体からの依頼もあるようです。
一方、同じ死者の話ですが、自治体が運営する火葬場からでる仏さんの残骨灰を、廃棄物業者の間で奪い合いになっています。この灰のなかには、人骨などと同時に金、銀、プラチナなどの貴金属も交じっているからです。
横浜市での残骨灰騒動が騒ぎになりましたが、その他にも20以上の自治体が業者に払い下げています。奪い合いが起こるほどですから、けっこうよいビジネスになっていることは確かなようです。
少し前まで、これらよごれビジネスは、金にはなるけれど多くが手を出さない嫌われるビジネスでした。それが、今では脚光を浴びるビジネスへと姿を変えています。
大きな目でみますと、現在のわが国は過去にため込んだ資金や資産などを、掘り返すビジネスが脚光を浴びています。想像している以上に、この国のパイは小さくなっている気がします。
【ひと言】
遺品整理に限らず、構造物の清掃事業、ごみ処理、下水道処理など、よごれビジネスは赤字になる企業が少ないことで知られています。ただ、生産性が低く、多くの人手を必要とするビジネスですから、簡単には開業することができません。この参入ハードルの高さが、高い利益の源泉になっています。今後は、AIなどと組み合わせることによって、新たなビジネスチャンスが生まれる予感をさせる事業でもあります。