最近、災害の被災地に出かけた安倍首相が、腰を下ろして被災者の方と話しをするシーンをよくテレビで見るようになりました。このような接し方をするのは天皇ご夫妻と思っていましたから、不可思議な気持ちになります。
これまで首相や地元知事が被災者を見舞うときは、ある程度距離を置いて声をかけていました。ニュースにはなりませんけれど、過去の災害では罵声を浴びせられた首相も少なくなかったようです。
何が変わったのか? 過去の経験から首相が声をかける相手は、事前の下調べをした人とは思いますが、同時に被災地向け支援を具体的に準備した上で話をしているように思います。
現在のわが国の財政状態は、過去と比較しても一段と悪化の道を辿っています。間もなく約1100兆円に達する国の借金は、昨年少し減額した程度で基本は膨み続けています。
長年、「経済再生なくして財政健全化なし」と言い続けてきた安倍首相です。アベノミクスを駆使した経済は、2016年、17年あたりがピークなので、本来は財政健全化が進んでいるはずですが・・
心配なのは、国の最悪な財政状態を忘れたふりをして、政治家や官僚が自分の時代には思い切って資金を使おうとしていることです。東京五輪という隠れ蓑もあって、使えるうちに使うといった気分が蔓延しています。
今の時代、真剣に国の財政を心配している人は変わりもの扱いされかねません。アリとキリギリスのような話ですが、後年になって「あのとき財政の心配をしておくとよかった」というような後悔が訪れる気がしてなりません。
同じようなことはバブル経済の1980年代後半から90年代にも起こっていました。バブルに踊った中小企業の大半は後日倒産していますし、大手企業も経営能力のない社長の会社は大変な痛手を負っています。
バブル後と現在と違うのは、企業の救済にあたるはずの銀行が、ゼロ金利によってこれまで経験ないほどに体力が弱っていること。国の財政も厳しくで、赤字国債の引き受け手がなくなることも考えられます。
学生の奨学金、西日本豪雨被害家庭への支援金、働き方改革への助成金など目立つところではポンポンと資金を出す安倍首相。将来、財政が本当に厳しくなったときに、「国民も納得していたはず」などととぼけられては目も当てられません。
【ひと言】
戦前、日本が太平洋戦争に突入していった背景には、18年前に発生した関東大震災、その前の大恐慌からの復興費用が重荷になっていました。現在の財政赤字も。阪神大震災、その後の金融危機、リーマンショック、東日本大震災が積み重なっています。人の目は目先のことばかりを注目しがちですが、歴史を振り返る目もビジネスには必要です。