リーマンショックが起こってから来月で10年。再び、大規模な金融危機の発生を予感させる貿易戦争がはじまっています。米国はトルコに対し、鉄鋼とアルミニュームの輸入関税を2倍にすると表明しました。
米国への貿易不均衡に加え、トルコに滞在する米国人牧師が16年のクーデター未遂事件に関わっていたとして2年間収監されています。キリスト教団体の強い支持を受けるトランプ大統領としては、引くことのできない問題です。
他方で米国・連邦準備制度理事会は、リーマンショックのきっかけとなったサブプライムローンで崩れた金融制度を立て直すため、大幅に引き下げた政策金利を徐々に引き上げにかかっています。
これまで米国から新興国に流れて経済成長に一役買ってきた投資家のドル資金が、現在は米国に向かって引き上げられている最中です。そのため、トルコの通貨リラは年初から比べて43%も下落しています。
トルコばかりでなく、アルゼンチン・ペソ、ロシア・ルーブル、ブラジル・レアル、南アフリカ・ランドも下落は続いています。1997年にも、タイから始まったアジア通貨危機が、韓国、マレーシアなど次々と起こりました。
多分、まったく同じ道を辿るとは思えませんが、似たような通貨危機を一つのきっかけにして何十年に一度の大不況が起こる可能性は高くなっています。特に、現在のように世界が同時に好景気のときは危険な兆候です。
問題は日本です。米国をはじめ世界の先進国は、次の不況に備え金利の引き上げに動き始めています。日本だけは、日銀が金融緩和を続けたまま2%の物価上昇の目標にしがみ付いたままです。
また、過去の金融危機の時のように、不況対策のため財政出動をしたくても、膨大な借金を抱え金利上昇につながる金融政策は無理です。しかも、企業への金融支援の窓口になる銀行が、厳しい経営環境で身動きのとれない状態です。
過って、「米国が咳をすると日本が風邪をひく」と言われましたが、今は世界の主要国の咳にも脆弱な財政の日本経済は高熱を出すほど弱っています。政府の空元気に騙されず、万が一のことを考えながらビジネスに取り組んでみては?
【ひと言】
間もなく自民党総裁選が始まりますが、安倍首相には現在の多額の借金をどのように減らすのか説明して欲しい。景気は良くすることで財政も再建すると言ってきましたが、この5年でほとんど無理なことははっきりしました。「今だけ」の政治を続けていると日本は間もなく、アルゼンチンやロシアのような過去の大国に成り果てていきます。