時代の進化と共に、事業はますます細分化して顧客ニーズに応えようとします。特に、日常的によく使うモノ、お客さんのこだわりの強いモノほど、細分化が進み市場規模も大きくなります。
今から30年前には、寝具やその関連商品を揃えようと思うと、大半をスーパーや街の布団屋さんが一手に引き受けていました。睡眠に関する科学的な研究はほとんど進んでいない時代のことです。
現代は、寝具に関する大きな売り場を設けたニトリ、イケアなどが現れました。また、ベッド専門店、枕専門店、病人用ベッド店、睡眠マット、タオルケット店、果てはペット用ベッドやトゥルースリーパーにまで、市場は拡大しています。
この寝具用品のように事業の細分化は進み、市場が拡大することで起業する人にとって大きなチャンスになります。一方、起業を目指す大半の人が働く会社においても、事業の細分化を次々と進めています。
企業は合理性と効率性とを求め続けていますから、そこで働く従業員には細分化された高度な専門的業務を求めます。結局、一人ひとりの従業員は、戦力として果てしなく細分化した仕事をすることになります。
そこで起こるのが、自分は「会社で一生小さな歯車としては働きたくない」と考える従業員ほど起業を目指しますが、会社の仕事を通じては細分化された業務しか身に付けることができない現実に直面します。
そのために、結局は起業を諦めることになります。大企業や中堅企業で働く人より、中小企業で働く人の方が会社の業務全般を経験することができるため、起業には向いているとも言えます。
最近のベンチャー企業の出身者に、起業するケースが多いのもこのような事情が関連しているように思います。どのような立場で仕事をしていると起業しやすいかは一概には言えません。
ただ、自分の性格や長所をよく認識しておいて、最良の場所に身を置く覚悟は必要です。あまり居心地のよい場所で仕事をしていると、起業に立ち向かう気合は失せてしまいます。
【ひと言】
最近の起業では、以前のようにマーケティング調査であまり細かな設定はしなくなりました。よく言われるのは、セグメンテーション(細分化)とターゲティング(顧客対象)、ポジショニング(市場での位置取り)の3点。この3点をしっかり抑えた上でどれだけ独自性を出すことができるか、後はお客さんニーズをキメ細かく聞くことで起業につなげていきます。