近年は大手・中堅企業の多くが、新規事業の立ち上げを自力では行っていません。現在は資金の潤沢な会社が多いこともあって、自力よりもM&Aを活用して他社を買収したり、資本参加により他社の新規事業を手に入れています。
新規事業を立ち上げるには人材や多くの資金が必要ですが、それだけ苦労しても成功につながる会社はわずか。その大きな理由は、役員会を通じ誰もが賛成するようなビジネスは顧客には魅力に欠けるからです。
美味しいメニューを作ろうとするとき、一人で作るなら少しはリスクがあっても、味を優先させるため生ものや万人受けしないスパイスも使用します。これを何人もで作ると、安全第一のために熱を通した刺身さえ作りかねません。
新規の事業参入もこのような流れに似ていて、ワンマン経営者が手掛ける新規事業ならリスクもOKですが、何人もの役員によって決めるとなると最も無難な事業しか立ち上がりません。
起業するときも、これと似たような現象がよく起こります。高齢者から子供まで万人受けするビジネスは、顧客ターゲットの間口が広いですから、大きな成功につながりやすいと思いがちです
ところが、多くの人に受け容れてもらえそうな商品やサービスは、ほとんど買いたくなるような魅力的な商品ではありません。商品棚に陳列していても不思議ではないけれど、消費行動にはつながらない商品といって間違いないです。
よく政府や地方自治体が、苦労して商品開発にこぎ着けた商品を売りだすことがあります。ただ今もって、全国的によく売れた官製の商品など思い出せる人はいないのではないでしょうか。
起業や新規事業で、多くの人の意見を参考に開業しても成功することは難しい。多くの人によい商品と感心してもらうことより、賛成してくれる人は少なくても購入してもらえる商品、サービスを扱う事業を考えるべきです。
【ひと言】
「経済成長なくして財政再建なし」は、安倍首相が何かにつけ口にする政府の財政再建策。バブル崩壊以降、自民党政権が常に口にしてきた政策ですが、結局これまで一度も成功することなく、景気浮揚のために多額の資金ばかりをばら撒いてきました。その結果が巨額の財政赤字です。あたかも自分の小遣いのようにばら撒くのを止めないと、この国の若者の将来を奪うことになります。