10月22日の夜、ソフトバンク会長の孫正義さんは、果たしてぐっすりと寝ることができたかどうか。23日サウジアラビアで開かれる投資会議に参加するかどうかを考えると、寝れなかったような気がします。
サウジは、原油に100%依存する経済から決別するため、保有する資金を使い投資ファンドに出資を行っています。その投資先の一つが、孫さんが主導する10兆円規模のファンドで、現在精力的に投資先探しを孫さんは進めている最中です。
ここまでは順調でした。ですが、今月2日トルコで発生したサウジの反政府ジャーナリスト殺害事件に、ファンドへの投資を決断したサウジ側のムハンマド皇太子が、関わっている疑いが濃くなっています。
欧米各国を中心に、23日の投資会議には不参加を発表する企業経営者が相次いでいます。世界の視線は、サウジの皇太子が会議に現れるかどうかと同時に、孫さんが参加するかどうかにも注目が集まっています。
ここから、経営者としての孫正義さんが重大な意思決定を行うことを迫られています。ソフトバンクとしては、既にクラウレCOO(最高執行責任者)はこの会議への不参加を公表しています。
孫さんは立場が一段上のファンド主催者なので、ソフトバンクが出席しなくても孫さんが出ることは十分あります。人が窮地に陥っているとき、進んで救いの手を差し伸べることにより厚い信頼を得ることはあります。
一方、一つ判断を間違えるとアラブの皇太子と一緒に、世界のビジネス界から消える危険性もあります。世界的に原油需要が徐々に減り始めている時代ですから、過ってのアラブ社会の威光は薄れていることも確かです。
立場を変えて考えますと、起業する人や中小企業経営者も、同じように重要な意思決定を迫られるシーンは常について回ります。あらゆる角度から問題点を照らしてみて、最後は経営者が自分で決めるしかない厳しい世界です。
【ひと言】
経済の世界でリーダーというと、大企業経営者を思い浮かべる人が多いと思います。確かに経営する会社の数万人の社員にとってはリーダーですが、広く経済という視点から見ますと、決してリーダーと見なさないのが最近の風潮です。最近は、創業社長を経済界のリーダーと見なす傾向が強くなっています。創業者は厳しい経済環境に強いからです。