モノづくりをしている人の潜在意識の中には、当たり前のように右手を利き腕にした発想があるようです。右利きのわたしにはまったく想像できませんでしたが、ボールペンは左利きには不便な筆記具の代表格をいいます。
一般的なボールペンを使い左利きの人が文字を書くと、書いた後から文字の上を手が通るため、濡れた文字に手が触れ汚れることがあるようです。そこでゼブラは、超速乾性インクを使った「サラサドライ」を開発しました。
通常、ボールペン販売では、年間100本売れるとヒット商品と言われるようです。サラサドライは16年2月の販売開始以来、600万本を超えるヒット商品になっています。
日本国民の中で左利きは1割弱と言われます。従来のビジネス手法では、9割を占める右利きの人を顧客ターゲットに展開を考えます。モノ余りの日本では、商品やサービスの細分化が進んでいますからこれまでになかった分野が注目を集めます。
文房具市場では、ノートやハサミ、カッター、定規などに左利き向け商品開発が進んでいます。楽器では、ギター、ベースなどでも左利き向け製品が売れはじめています。
先鞭をつけたのは野球用のグラブでしょうか。アイスホッケーのステックにも、右用と左用があります。調理においては左利き用包丁が有名です。お玉にも左用があると聞きました。
新たなビジネス展開を考えるとき、左利き用商品を他のジャンルで考える手法があります。PC関連ではマウスやキーボードの左用、スマホの左用なんてカタチの開発もされる可能性はあります。
もう一つ、1割の左利きをターゲットにしたように、ぽっちゃり系の人向けの衣料が市場を広げているように、標準といわれるカタチからはみ出している人向け商品に、相当開発する余地があります。
特に高齢化が進みますと、サイズの小さいモノがニーズが高くなります。わたしは、母親の足に合う靴のサイズがなくて苦労した経験があります。大きな声にはならないけれど、市場にはなくて困っている人はまだまだいます。小企業のビジネスには向いています。
【ひと言】
「起業と新規事業とは違いませんか」という質問を時々もらいます。わたしが起業経営相談をしている中で、新規の起業と既存企業の新規事業とは別物と考える人がいます。現在、経営の世界では「両利きの経営」手法が広く認識されています。これまでの事業を一段と突き進めるか、この事業に関連した事業に注目するかの2通りです。この展開の仕方は、起業でも新規事業でも同じプロセスを辿ります。大事なことは、いかにお客さんを増やせるかどうかの問題と考えています。