過って、新たなビジネスに取り組む時ならば、関心が高く将来性のあるビジネスを選ぶことが重要とされてきました。好きな業種で、慣れていて効率よく仕事ができるなら、起業をしても就職をしても上手くいくと言われ続けました。
最近、この仕事選びの風向きが変わってきています。最も好きな業種や手慣れた仕事よりも、その仕事を誰と一緒にするのか、仕事をする同僚や上司の存在が大きくクローズアップされるようになりました。
米国で話題になる大型の起業では、ほとんどがビジネス開発者と管理者との組み合わせによって立ち上げています。マイクロソフトをビル・ゲイツが立ち上げて以降、ビックビジネスに成長する企業はほとんどがチームで仕事をしています。
逆に、一緒に仕事をする相手がとんでもない人間なら、ビジネスばかりでなく人生をも狂わせることになります。その典型的な事例ともいえるのが、以前米トランプ大統領の弁護士をしていたコーエン弁護士です。
トランプ氏のビジネスからプライベートまで深く関わっていた彼は、先日の裁判で禁固3年の刑を受けました。ロシアでのビジネスも、愛人への手切れ金でも、「トランプ氏への忠誠心から虚偽の発言をした」ことを認めました。
日本では先進的なビジネスを展開してきた、セゾンの堤清二氏やリクルートの江副浩正氏の部下からは、多くの起業家や経営者が生まれています。ビジネスを成し遂げる感性は、人が人を育てる手作りの世界と思います。
急に勤め先を代えたり、起業する相手を探すのは難しいと思いますが、日ごろ付き合う相手を考えたり、選んだりすることはできると思います。人間は元来同調性の強い動物ですから、一緒に仕事をする人は考えた方がよいです。
【ひと言】
わたしが一緒に仕事をする相手を意識するようになったのは、40代も後半になってのこと。ひどく仕事に厳しい上司で、せっかく苦労してクライアントとまとめた企画なのに、価格で再交渉するように指示されたり、文章の全面書き換えを命じられたり・・ 本当に仕事に対する基本的考え方や、どんな事態にも対応できるタフな精神を植え付けられました。特別仲がよいわけではないけれど、この出会いがなかったらその後の自分はなかったと思います。