先日、アマゾンが発表したビジネス書大賞2018はフィル・ナイト著『SHOE DOG (シュードッグ)』でした。ナイキの創業者が、父親から借りた50ドルを元手に、アディダス、プーマを超える会社を創り上げた話。
準大賞も、山口周著『世界のエリートはなぜ「美意識」をえるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』
ルトガー ブレグマン著『隷属なき道AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』 ビジネス内容がすっかり変わってしまったかと思うほど、ビジネス書の変貌は激しいです。
昔からのノウハウ物のビジネス書はすっかり売れなくなっています。出版社からは毎月そこそこのノウハウビジネス書は売り出されていますが、ほとんどがベストセーラーになることはなくなりました。
米国では、07年にフィリップ・ローゼンツヴァイク著『ハロー効果』出版され、たいへんな話題になりました。企業経営での成功談や成功とされる企業と一般企業との比較検証をした本です。
この成功体験に基ずくビジネス本は、経営者の個性や経営手法が業績に及ぼす影響を誇張して書かれていて、ほとんどこれからの人のビジネスには役に立たないと結論づけています。
心理学でいう「ハロー効果」は、成功している人のやることは全てよいこと、失敗した人のは悪いと色眼鏡で見る心理。ビジネスはそんな単純ではありませんが、単純化によって誰もが成功できるような錯覚を利用します。
このような米国の動きが、日本の出版界にも影響を及ぼしているのかも知れません。最近、よく「起業準備をはじめたいけれど、どんな本を読むとよいですか」と聞かれることがあります。
日本は周辺国と比べ、企業経営に対する関心が低い国です。以前は、米国大学のMBA(経営学修士)で学ぶ人はそこそこいましたが、ここ5年ほど、中国、韓国、台湾よりも日本の学生は極端に少ないようです。
経営の基礎を学ばずに起業するということは、泳げない人を海に放り投げ、苦し紛れで泳ぎを覚えさせる、昔ながらの起業スタイルが今も個人レベルでは行われています。
特に、起業する人でも、起業家を育てる教育ビジネスでも、自信過剰の人ほど人気を集める傾向があります。これも錯覚の一種で、安易に信用するのは危険です。起業を軌道に乗せるのは、自信だけで何とかなるほど簡単ではありません。
【ひと言】
現代のビジネスの進歩とは、業種ごとのビジネスの細分化が進むことをいうのではないかと思うほど、どのジャンルにおいても細分化は進んでいます。そのため、過去のモデルの古ぼけるのが早くなっています。起業経営相談でも現状の話まではできますが、その先は当人が新たなモデルを探すここからが勝負といえます。