鳥貴族の19年7月期決算予想は、現代の居酒屋ビジネスの難しさをまざまざと見せつけました。18年度6億6200万円の黒字だった最終損益が、19年度は3億5600万円の赤字を予想しています。
鳥貴族といいますと、09年から売上げの前年割れが続いている居酒屋業界にあって、年々売上げと利益を伸ばす優良企業の一社でした。直営店とフランチャイズ加盟店とが55:45の比率でほぼ理想的な展開とされてきました。
所が17年10月、それまで税抜き280円で統一していた商品価格を、298円に引き上げるとお客さんの減少が始まりました。ライバル居酒屋が値上げをする中、1989年から28年間守ってきた価格を18円上乗せした途端です。
17年度売上げは293憶円、18年度339億円、19年度358憶円(予定)と伸びてはいます、これは年間に50店以上の新店舗出店数を急増させた結果で、既存店は14カ月連続で売上げを減らしています。
他の居酒屋に比べ長く好調が続いていた鳥貴族は、その要因の一つにわが国のデフレ経済が味方していました。物価を引き上げる力のない経済は、焼き鳥と単一価格の判りやすさを後押ししていたようです。
14年に上場を果たし、資金力がついたタイミングで焼き鳥ブームが起こりました。ここを商機とみて積極的な出店政策を取ります。16年に400店弱だった会社が、1000店の出店計画を立てます。
今は、どこの都市の繁華街にも焼き鳥店が多数あります。最近は、鳥貴族の看板が同じストリートに2店、3店あるような街も出てきました。ライバルの焼き鳥店も低価格やブランド鶏を売りに出店しています。
あっちにも、こっちにも貴族があるようでは、価値も地に落ちてしまいます。実際、大倉社長がマスコミによく出るようになるのと反比例して、鳥貴族の勢いは墜落していきました。
経営者の現状認識に誤りがあったようです。自社が扱う商品にブームが起こることは、チャンスではありますが多くが参入して過当競争にも巻き込まれます。焼き鳥の前はから揚げでしたが鶏は難しいです。
【ひと言】
焼き鳥は、昨日今日生まれた食品ではありません。昔から居酒屋のメニューとしては定番でしたが、焼き鳥のブランド化、鮮度、ボリュウームなどが、ブームになってから大きく変わりました。鳥貴族は、取り置きをせずに当日の串差しが美味しさの秘訣とされてきましたが、今ではどこの焼き鳥店でも採用していて、他の店と違いが見えづらくなっています。
人気ブログランキング