2年前、起業相談をしてくれた人から「出資してくれる会社があって、やっと起業できます」と報告メールが送られてきました。会社勤めをしながら起業の機会を長年伺い、やっとチャンスに巡り合えた40代男性です。
昨年あたりから、ビジネスコンテスト、ブログ、知人などを通じ、会社から出資を受ける話が増えています。経営の順調な会社は、内部留保の資金が増えても、投資先が見つからず起業を目指す個人にも資金は廻るっているようです。
対外的な貿易不振は日増しに深刻になっていますし、日本の株式相場も下がり始めています。新規事業の一環として、自社では事業を探さず起業する人に出資するカタチで新規事業の肩代わりと言えそうです。
現在、ヤフーとアスクルの間では、個人向け文房具ネット販売「ロハコ」事業の取り合いが起こっています。アスクルにとって大株主のヤフーは、自社サイトで赤字事業のロハコを引き取り、立て直しを考えています。
大株主は、出資した事業が予想通りに利益を生まない場合、自社で立て直しを図ることはよくあります。一方的親会社の事情によって、事業譲渡や外部への会社売却など、資本の論理により子会社が断れないケースが生まれます。
08年に発生したリーマンショックの大不況の後には、この親会社の資本の論理が広く横行しました。親会社の経営に火がついている状態ですから、子会社売却も致し方ない面があります。
事業経営には、このような無常な一面のあることを忘れない方がよいです。自己資本だけでは会社規模は大きくなれませんが、外部から資金が入ると事業の可能性は大きく広がります。
同時に会社の進む方向も、創業者のはずの自分が思いもしなかった方向に進みだします。後から無知を後悔するよりも、十分認識したうえで会社経営に関わることです。
【ひと言】
起業を目指す人は、創業する業界や商品知識に関しては十分準備ができていても、会社を取り巻く経営環境に関してほとんど知識のない人が多数います。特に、ファンドや他社からの資本参加に関しては、プラス面ばかり注目してマイナス面に気付かないことが多いです。ビジネスの世界には善人はいないと考えるべきで、メリットかデメリットの世界です。
