コロナショック以後、国内物価は1月から全般的に下がっています。「失われた20年」は日本人にとって共通認識となって、デフレによる物価の横ばいや下落が当たり前のこととして語られてきました。
現在、コロナの第一波が収まりつつあるなか、再び物価が下落するデフレ発生危機が迫っています。日本経済を立て直すには、まず付加価値を高める必要がありますが、ここでも物価上昇を抜きにして経済成長は語れません。
日本の企業経営者が価格設定を考えるとき、まず第一に参考にするのが世間相場。最初に他社がどのような値付けをしているかを参考に、自社商品をそれより上にするか、下にするかを考えます。
そのため、どうしても独自の価格設定をすることが困難になります。現在、米欧での価格設定の方法は、最初にいくらで売れる価値の商品か、値踏みから始めます。この価格設定には時間と費用をかけます。
原価が3万円の商品の場合、まず原価を別にして市場ではいくらで売る価値があるかを探ります。もし、20万円の価値があると仮定しますと、会社の収益と顧客の収益とを折半して、10万円で販売することを考えます。
日本の場合、中小企業が販売価格を決めるときは、まず他社の類似商品価格を参考にします。社長の独断で原価3万円なら5、6万円で値決めをする残念なシーンを何度か目撃しています。ほぼ即決です。
顧客にはいくらなら購入してもらえるか、調査する仕組みがなければ、市場調査をする専門家も日本にはいません。そのため、価値の高い商品を安売りし、市場の足を引っ張る習慣が常態化しています。
古い経営者がよく口にする、「業界の常識」が自分の首を絞め続けています。これから企業経営を目指すなら、安易な方法で販売価格を決めずに、自社独自の方法で価格戦略を考えるべきです。
【ひと言】
価格戦略に関しては、アップルのスティーブ・ジョブズが今世紀最高の立役者と言えます。彼は、通信機器や音響機器で世界最高の利益を生むメーカーを作りました。当時、アイホーンやアイパッドなど、多くのメーカーが自社でも製造できるレベルの製品と言いましたが、製品デザインと価格戦略とによって、どこも真似のできないアップルの世界を作りあげています。