東京証券取引所は10月1日、株式売買を行う情報システムに障害が発生、1日の取引を停止しました。証券取引所が自己都合により1日中取引を行わないのは、わが国の株式市場がいきなりストップしたわけですから大変な事態です。
今後、投資家との間で賠償問題が発生する恐れがありますし、香港から東京に金融センターを移動させる計画にも赤信号が点ります。何より、正確さを売りにしていた日本製品への信頼が揺らぐことにもなりそう。
東証は証券取引を行う、子会社の東商コンピュータシステムがハードの運用をしています。ただ、今回問題になっている株式売買システム「アローヘッド」をはじめ、システム開発全般に関しては富士通が請け負っています。
日本の産業界の特殊事情と言われますが、情報システム部門に関しては多くの企業が、特に古くからの大企業の場合は大半が外部委託しています。東証も例外ではなく、富士通を通じないとほとんど故障解明は難しいようです。
現代のビジネスでは、社内に張り巡らされたコンピュータシステムが全事業の生命線を担っています。今回の東証のようにコンピュータがダウンしてしまうことで、全社の売上げがゼロになってしまう会社も誇張ではなく多いです。
その生命線を外部に全面依存していますと、万が一依存先企業の業績悪化で倒産するようなことがあった場合、情報システムの運用も一気に不安定になります。利益最優先のはずの米国企業が、情報システム部門は自社管理で多くのスタッフを抱えています。
日本では官公庁が同じ問題を抱えていて、こちらでは「ベンダーロックインのわな」が話題です。システム開発を特定のIT会社に依存しているため、その会社の意向に振り回されることになります。技術的にも自由なシステム作りが不可能です。
オンライン会議には必須とされる「Zoom」導入に際して、日本の大企業は直接Zoom社と導入交渉をしないで日本のIT企業を介して導入する、世界でも日本だけの販売方式に縛られています。
この方式は、日本の大企業もIT会社も安定したビジネスをすることができます。ただ、世界の潮流からはどんどん遅れていくことになります。日本のIT企業は他国の企業と違い、国内市場だけを相手に安泰したビジネスができ、リスクを負った新製品の開発をしなくなります。
今回の東証のトラブルを契機に、日本企業が社内の情報システムへの考え方を変える可能性があります。経営者が情報システムに対する考え方を変えないことには、この国はますます万が一の危機に対応することのできない国になるからです。
【ひと言】
外国製品の日本販売ばかりでなく、日本を特別扱いする事例が国際ビジネスにおいては多くなっている気がします。特別扱いはVIP待遇のようで耳障りはいいですが、日本の場合は国民所得がここ20年ほとんど増えておらず、国の経済成長率もほとんど1%以下です。特別扱いしている会社の業績が悪くなると、取引先から日本を外す可能性がありますからあまりいい気ではいられません。
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