中小企業経営にとって現在とても難しい課題は社員教育です。従来は、社内で先輩から教えてもらうOJTで、言われたことを忠実に繰り返してくれることで新人の仕事は十分でした。今は、従業員の絶対数が少なくなったこともあり、悠長なことを言ってられません。
また接客ビジネスにおいては、新人社員が接客の最前線で仕事をするケースが多いですから、短期的に効率のよい教育は欠かせません。顧客に直接接する社員は、苦情や要望と同時に重要なビジネス情報も多数集まっています。
この情報を感度よくキャッチできるかどうかは社員教育で決まります。ただ多くの中小企業経営者は、社員教育を全くの畑違いと思っています。精々、業界や地域の経済団体が行う社員研修に参加させ、カタチだけの教育で満足してしまいます。
今注目されているのは、長野県の中堅バス会社が社内で実施している社内教育です。観光案内を行うバス会社にとってバスガイドは接客の最前線。バス旅行に参加すると、担当したガイドさんの優劣は旅行の感想に直結します。
そこでこのバス会社は、新人ガイド向けの案内マニュアルを渡すことはせず、テキストを参考に自分でノートに作成することでマニュアル作りをさせます。結構手間のかかる作業ですが、ガイドは観光コースごとに何冊もの個人用マニュアルを保有することになります。
他にも、観光案内の台詞を暗記して話すため、文章を常に書くことを徹底して取り組んでいます。若い女性の多い職場ですが、社内教育を通じ人間的にも能力が高くなるようです。今は、このようにやる気を引き出すとそれに応える若者が多くなっています。
このバス会社では、ガイドが顧客の要望を基に新たな旅行プランを提案しており、社長以下経営者がそのプランを審査する仕組みも出来上がっています。中小企業では、少ない経営資源を最大限活用して顧客満足を高める経営を行っています。
これは社員教育が良い結果を生んでいる一例ですが、どのようなカタチにしろこれからの企業には効果的な教育は欠かせません。独自の人任せにしない教育によって、若手社員も会社も成長することが可能になります。
【ひと言】
コロナ禍の発生以降、希望退職者を募集する会社がとても増えています。経営者の説明の中に、「今後社内でデジタル化を進めるには、資金が必要になるために中高年社員より若手の方が魅力的。それにデジタル化で仕事の進め方が変わるので、フットワークのよい若手に任せたい」