わが国では新型コロナウイルス流行するずっと前から、衣服に関連するビジネスには不況風がブンブン吹き荒れていました。特にアパレルや紳士服は、業界全体が真っ赤っかと言われるほど赤字企業が増え続けています。
ただどの業界にもみられることですが、不況、不況と言われる業界にあっても黒字経営を続けている会社はあるものです。ユニクロなどはその代表的な会社で、国内ばかりでなく海外市場においてもしっかり黒字経営を続けています。
紳士服の代表格の背広市場は、サラリーマンが出社時に背広を着なくなって久しいですが、12年の設立以降着実に黒字を積み上げている会社があります。オーダースーツの「ファブリックトウキョウ」がその会社です。
この会社の特徴は、ネットを活用してオーダーメイドのスーツを販売しています。若者や多忙なビジネスマンをターゲットにした営業展開です。また市場では、10万円以上が一般的オーダーメイドの世界で3万円からの価格で提供します。
これまで3万円台の紳士服は、中国、ベトナムなどアジア諸国で生産していますが、ファブリックトウキョウは国内製造中心の事業展開。衣服業界の常識を破るビジネスモデルを可能にしているのは、「D 2 C」による販売方法です。
「D 2 C」は「ダイレクトto コンシューマー」の略で、製造会社が直接お客さんに販売する手法です。これまでにも似たような販売方法はありましたが、「D 2 C」は製造会社がIT環境、物流、デジタルマーケティングなど販売に関する全てを展開します。
設立から8年の若い会社ですが、総合力を駆使し誰も指触を伸ばさない紳士服の世界に参入して存在感を高めています。最近の起業の傾向をみていますと、ITが入り込む余地がないと思われている市場で大きな成果を残しています。
これまでITとは相性が悪いとされていた既存ビジネスが、AIやクラウドサービスを取り込むことで新たな境地を開いています。今は常識が次々と覆される時代ですから、安易に人のうわさ話を信じないで、自分の得意分野での可能性を探り直すべきでは。
【ひと言】
米国でD 2 C企業として有名なのはソックスメーカーの「ボンバス」です。この会社は、ソックスを1足買ってもらうと、1足靴下をホームレスにプレゼントする手法で有名になり、業績も上げています。米国に根付いている寄付文化とホームレスの多くが靴下のないことに困っている話を結び付け、多くの支持を受けています。ここでのストーリーの作り方は学びたいものです。
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