今の日本は、社会全体が親会社と下請けとの仕組みでできていて、下請けはどんなに頑張っても社会的評価は得られないと思うことがあります。起業する人の中にも、自分の能力を高めやっと独立できたはずなのに、よく考えると単なる下請け仕事というケースがあります。
コロナ感染が全国に広がったことで、これまで見えなかった企業間取引の原型が見えるようになりました。東京オリンピックでは、組織委員会が人件費として最高1人当たり30万円計上しているのに、実際に末端の下請け会社が受け取るのは3万円程度まで中抜きされています。
オリンピックばかりでなく、国や自治体から親会社、そこから下請け各社の間には不明瞭な資金の流れがあちこちで見られます。東日本大震災の復興工事では、ゼネコン大手の部長に下請け会社が約2億円もの資金を提供して仕事をもらっていたと証言しています。
親会社は最小の社員数によって最大の利益と名誉と評価を得ています。反対に下請け会社は、少ない収益と厳しい人のやりくりといつ仕事が打ち切りになるか怯えながら仕事をしています。現在、このような事実が次々に公になるのは、この仕組み自体が末期症状を呈しているから。
日本は、国有鉄道、電電公社、郵政公社など国営事業を次々と民営化して、国の赤字を減らしていきました。次いで、国や自治体の事業を民間委託することで公的負担を減らしています。企業も社員を減らし人材派遣やアルバイト、パートに依存するようになっています。
その結果、大手企業に資金が集まる代わりに国民全体の購買力が落ちています。この状態が30年近く続いていますから、過っては世界第二位の経済大国だった日本もデフレ経済に苦しんで、もはや先進国と称されることさえ気恥ずかしくなっています。
しかも1200兆円にも達する借金を抱えていますから、コロナ禍が収まる22年以降ますます日本経済は厳しくなりそうです。今の仕組みを組み替える必要に迫られることは確かで、どの方向に進むのかビジネスに関わる人は考えるときです。
折角やっとの思いで立ち上げた会社が、大手の安全弁としての下請け仕事では不況のたびに厳しい経営に直面します。しかも会社成長の可能性を親会社に握られていて、どんなに努力してもカタチとしては何も残らないのでは寂し過ぎます。
【ひと言】
昔から起業に関して、「簡単に開業した会社は簡単に終わり、苦労して開業した会社は簡単には終わらない」と云われています。特に資格取得などに苦労して立ち上げた会社の場合は、固定したお客さんが付きやすいですから長持ちします。もし、あまりに簡単に開業できそうだったら、自分でハードルを引き上げてから開業する手もあります。
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