今から4年前国会を揺るがした森友問題は、国が保有する土地を官僚が勝手に当時の安倍首相と近い関係の人に格安で払い下げたことが問題でした。国の財産、ひいては国民の資産を市価よりも大幅に安く売ることは、日本の資産が細るばかりでなく大臣や官僚、公務員の規律も歪んでしまいます。
土地取引の場合は記録が残るため分かりやすいですから、森友問題のように官僚が起こした不正は後日問題になりやすいです。これが土地や物品以外の、新たに生まれた利権によって発生する不正の場合は、何が問題なのか分かりづらくなります。
このような時には、日本ではアメリカの例を参考に問題点を比較して考えるケースが多いです。今回ここで取り上げたいのは電波です。過去にも話題になったことがありましたが、依然として国会で取り上げられることなく今日まで黙々と続いています。
政府が通信会社に当たり前のように割り当てているのが通信電波です。日本では、NTT、ソフトバンク、KDDI、楽天に携帯電話用電波が割れ当てられています。日本ばかりでなく、電波使用に関して使用料金を徴収する発想はアメリカにも以前はありませんでした。
アメリカでも1994年から電波割り当ての入札制度を導入されるようになり、2020年までに96回目の入札がオークション方式によって割り当てられています。その間の総収入2362億ドル(約26兆円)が代金として国の収入になっています。
日本においてはこのような入札制度はありません。その代わりに、総務省が各通信会社に対し電波を割り当てその使用料を徴収しています。その金額は「主な無線局免許人の電波利用料負担額」(令和2年度)として公表されています。
NTTドコモは年間183億円 KDDI 131億円 ソフトバンク 156億円。スマホ事業を展開している各社の年間売上高が4兆、5兆円と莫大な金額を売上げる通信各社が、通信事業の生命線ともいえる電波使用料を年間売上高の1%にも達しない額しか払っていません。
その代わりとして政党や政治家に対する政治献金や、官僚の天下り先として社内ポストを用意しています。本来なら国民の資産として国庫に入るべき相当額の電波使用料が、政治家や官僚へ渡り代わりに国の借金だけは雪だるま式に増えているのが今の日本の財政の姿です。
これから日本を背負う若い人たちのためにも、このような仕組みは変える必要があります。これはスマホ業界だけでなく、テレビ局に対しても同じようにカタチだけの電波使用料が許されています。これでわが国には持続可能性があると云えるのかどうか。
【ひと言】
日本は、先進国では珍しい政権政党に自民党が長く留まっていて、政権交代による政治の浄化作用がまったく働かなくなっています。しかも、その自民党幹部になるためには、世襲議員か長老議員に限られる閉鎖的な世界ですから、国民の願望からはますます遠い政治が展開されています。これを変えない事にはビジネスも歪んだまま続きます。
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