東京オリンピックでは若い選手たちの活躍がめざましく、各選手がメダルに至るストーリーをもっていて興味を惹きます。2008年に発売されたマルコム・グラッドウェル氏の「Outliers: The Story ofSuccess(邦題:天才!成功する人々の法則)が大きな影響を与えています。
当時たいへん話題になった本で、幼児期から毎日3時間を10年間練習や修行を続けることによって、天才は生まれると強引な要約が伝わっています。これが「1万時間の法則」と云われ、実際に自分の子供に試した人もいるようです。
1万時間とは云わないまでも、高校や大学の野球、サッカー、駅伝などスポーツの世界では、短期集中で能力アップのため取り組まれています。あまり公にはなりませんが、音楽や芸能の世界においてもこの法則は生かされています。
学術やビジネスの世界には、エビングハウスの忘却曲線が有名です。こちらは、個人の脳に入った事柄の74%は1日で忘れられるというものです。社会生活をしている人には、連日押し寄せる波のように情報が脳に入ってきます。
それらを全て脳で記憶しておくことは不可能ですから、余程印象の深い事柄でないと忘れられてしまいます。その忘れられる情報量が全体の4分の3にまで達していまいます。いくら学ぼうと思っても、間隔が空くと脳には残らないということです。
1日毎日3時間練習や訓練を続けるということは、新たに覚えた技術や知識を忘れさせないためです。ただ、人間は新たなことを学ぶときは気合が入りますが、同じことの繰り返しを続けるのは苦手です。
能力のある人ほど単調な繰り返しには音を上げます。それを乗り越えての、10年間で1万時間の練習です。日ごろのビジネスや事業ですと1万時間までは必要ないです。また、決して天才をめざす必要も40代、50代にはありません。
最大の問題は子供が挑戦する時と同様に、練習のための長期プログラムを事前に用意すること。既にできているスポーツや音楽などと違い、新たに自分用のプログラムを作ることは難しい課題です。
【ひと言】
オリンピックを見ていると、若いメダリストの多くは親が過って同じ競技の選手だったケースが最近は目立ちます。二代に渡って念願のメダルを取るため、一万時間のプログラムに取り組む人たちがいるようです。ビジネスにおける取り組みの場合、単に時間を長くすることばかり考える必要はないと思いますが、後段のどのようなプログラムを考えて取り組むか、その内容が問題になりそうです。
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