ホンダが55歳以上の社員に希望退職を募ったところ、2000人以上の社員が応じたことで話題になっています。コロナ禍において、ホンダは決して経営が追い込まれているわけではありません。
20年度決算では、13兆1700億円の売上げで6600億円の営業利益、当期利益は6574億円です。世界的にコロナ禍が大流行しているなか、中堅自動車メーカーとして決して悪い決算ではありません。
トヨタや日産をはじめ、自動車メーカーを覆っている重苦しい空気の原因は、先進各国が打ち出している脱炭素のための環境政策です。米国は2030年までに新車販売の50%以上を電気自動車(EV)に切り替える大統領令を出しています。
今後9年以内にEV車への切り替えを迫り、日本メーカーが得意をするハイブリット車はこのEV車の中には含まれない内容です。米国ばかりでなくEUも、35年までにガソリン車の新車販売を禁止することを決めています。
現在、世界でも最も大きな自動車市場の中国は、35年までに新車販売は全て環境対応車に切り替えることを義務化する方針です。EV車製造が得意なうえ、排ガスによる環境悪化に苦しんでいる国ですから自国に有利な政策を立てています。
各国、地域が一方的に決定する国内規制ですから、日本メーカーは有無も言わずに従うしかありません。数年前からトヨタの豊田章男社長が、過去最高の決算の中でもこの先の厳しい環境の到来を予言していましたが、この各国の規制を予測していたと思われます。
現在は世界一の自動車メーカーと云えども、この先にはテスラ、五菱汽車、BYDなどEV車製造で1周も2周も先を走るメーカーと競争することになります。自動車製造市場のルールが、間もなく変更することが決まったわけです。
これは単にトヨタやホンダと云ったメーカーの問題だけでなく、自動車産業が生み出す付加価値に1割以上も依存している日本経済の問題でもあります。下手をすると家電や半導体のように、世界一だった業界がアジア各国に飲み込まれる図式が再現することになります。
そして自動車産業の衰退は日本経済の衰退にもつながることになります。これまで多額の借金を抱えていても、貿易輸出によって潤沢な外貨を稼ぐことで資金を回していた日本経済が、いよいよ追い詰められることにもなりそうです。
【ひと言】
日本企業が必死に海外企業との競争に打ち勝とうとしても、今の日本政府ではほとんどサポート役を果たしていません。日本の場合、同盟国とは言っても米国ばかりに依存した企業経営では成り立ちません。中国は大きな市場ですから、米国同様に輸出入を活発化したいところ。中国共産党政権の強権には賛成できませんが、それと経済とは別物として対応してもらいたいもの。それが政治の役割と思うのですが、中国とはパイプが細くなってEU勢に美味しいところを取られているのが現実です。
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