9月いっぱいで全国に発令されていた緊急事態が解除され、コロナ禍によって売り上げが大きく下がっていた業界は、やっと一息つけるかに見えました。ところが行政によって、営業停止や時間短縮の要請を受け最も影響を受けた飲食業には次なる試練が待ち受けていました。
10月に入り各地で次々に営業をはじめますと、今度は仕入れ価格の上昇に悩まされています。秋以降世界的なワクチン接種の効果が表れていることもあって、コロナ感染者数は各国で低下傾向を示します。その動きに伴い、世界の国々が同時に経済活動を再開させました。
そのため各国で農産物やエネルギーの取り合いが始まりました。その極端な例は、ロシアからヨーロッパ各国に供給されている天然ガスです。一説にはプーチン大統領が仕掛けたともいわれますが、ガス供給が減っているため価格上昇が止らず、石油や石炭価格の上昇を誘引しています。
しかも国連が中心になって脱炭素の動きが世界的に始まりました。今、これから世界は「グリーンフレーション」の発生に悩まされることになります。投資も需要も、脱炭素シフトへの移行を目指していますから、エネルギー転換に伴う新たな物価高騰の新現象です。
この問題は、経済現象というよりも政治によって解決するしかない問題です。供給不足は長引きますから、解決には時間がかかります。アメリカをはじめ、世界で新自由主義からケインズ主義への転換が必要とされているのは、この政治の力でしかエネルギー転換は進まないことに起因しています。
日本の消費者は価格の変化にとても神経質です。長引くデフレによってこの30年、労働者の給与は4%しか上昇していませんから、生活防衛のため価格の安い商品ばかりに依存しています。下手に値上げしたことで、閉店に追い込まれる店舗も少なくないです。
NTTタウンページと日本経済新聞の調査によりますと、コロナの発生によって全国の飲食店のうち1割の店舗が閉店に追い込まれています。約45万店のうちの4.5万店もの閉店です。2年近いコロナ禍の中を店の火を落とさなかったのは、続けることによる残存者利益が頭にあったはずです。
この新たな事態にどう対処するか、たいへん難しい事態が今後悩ませる可能性が高いです。これまでのように低価格を売りにしたビジネス自体、飲食にだけに限らず難しくなります。新たな起業においては、この状況をよく見極める必要がありそうです。
【ひと言】
日本の政治家、特に政権与党の政治家は、このような複雑な問題に対し自分の支持者の顔ばかり向いて政治をしているため、ほぼ多数の国民に役立つ判断は期待できません。本来なら、少ない資金で効果的な政策が必要なのでしょうが、アベノミクス以降資金を使うことばかりを目的にしている政治家が多いです。そのため、資金を使わず頭をつかって効果を上げる政策を考えるケースが少なくなっている気がします。
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