ビジネス手法は時代の変化に合わせて変わっていきますが、特に最近は利益ばかりを優先するビジネスは敬遠され、“他利”に代表される他の人のためになるビジネスが注目を集めています。アメリカで今年9月に上場した「ワービーパーカー」はその典型的企業の1社と言えます。
“by a pair, give a pair”をモットーとするワービーパーカーは、手ごろな値段で品質のよいメガネを販売している11年前に創業した会社。お客さんがメガネを1つ購入してくれると、経済的に恵まれない新興国の人にメガネを無償もしくは格安な値段で提供することで会社を大きくしてきました。
これまでに800万個のメガネを提供してきた実績があります。このビジネス手法はアメリカでもインパクトが強いようで、上場後の企業規模を計る時価総額は54億ドル(6000億円)にも達しています。上場時の時価が10億ドルを超える会社が目白押しのアメリカでも、ワービーパーカーの成長は大変な話題になっています。
2010年、創業当初はEC(ネット販売)のメガネ店としてスタート、3年後には路面店舗の出店を始めました。それまでアメリカのメガネ市場は、大手チェーン店の寡占化が進んでいて200~300ドルの価格帯でほぼ高止まりしたショッピングセンター内での販売店が主流です。
ワービーパーカーは価格を100ドル程度に抑え、ネット上で選んだ5個を郵送してそこから1個選んでもらうシステムです。そのうえ、1個購入してもらうと1個新興国に寄付されますから、若者に圧倒的な支持を得ています。多くの若者が、自分たちのブランドとしてワービーパーカーを認めているといわれます。
新規上場する企業で時価総額が10億ドルを超えるスタートアップ企業は“ユニコーン”と言われます。アメリカは288社(21年4月現在)、中国133社、インド32社で、日本は11社です。多くの企業は、AI(人工知能)、宇宙開発、フィンテック(金融)など先端技術ですが、市場をよく検証すると従来型ビジネスにも新たな手法で参入する余地はあります。
日本においても大手企業により寡占化している市場の中には、スタートアップの参入余地がある市場があるのではないかと考えさせるワービーパーカーの存在です。その場合“利他”の考え方は強い味方です。一見全く無風にみえている消費市場も、一皮むくと変化を求めているお客さんは少なくないです。
【ひと言】
日本経済は、アベノミクスによる大規模な金融緩和を行って以降、すっかり動きが止まっています。黒田日銀総裁が「異次元の金融緩和」を言い出して実行してから、この国では日銀発の経済政策はフリーズした状態が続いたままです。新聞で大きな見出しの金融政策がでると、ほぼ大半がアメリカ・FRBからのニュースで日本からのニュースはほとんどなし。この異常事態を誰も異常と思わないのが今の日本かも。
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