コロナ感染の大流行が収束し、ロシア軍がウクライナから撤退した後の世界がどうなるか、ビジネスに関わる人には最大の関心事と思われます。一つはっきりしているのは、世界の経済が効率的に運営され最適な手段で製造、輸送、販売を進められた時代は終わったことです。31年前にソ連が崩壊し、世界の資本市場に誰もがアクセスできる時代はプーチンに手によって終わりを告げました。
中国を中心に東南アジアが世界の工場の役割を果たし、世界各国の中産階級が拡大して所得を増やした時代は、プーチンのロシアを経済大国に戻そうとする野望により、グローバル化が機能しなくなりました。ソ連が君臨していた31年以上前の時代に逆戻りし、政治的なリスクが再び世界を覆うようになりそうです。
既に、10年ほどの間に自国第一主義のナショナリズムの台頭は始まっていて、経済を重視する世界観は政治優先に塗り替えられていました。意外と日本ではあまり話題になりませんが、2013年安倍元首相が国連で演説をしたとき、日本にナショナリストの首相誕生で話題になりました。考えてみますと、グローバリズムの恩恵を最も受ける日本が、最も早く反グローバルのナショナリズムの首相を誕生させていたことになります。
13年には中国で習近平主席が誕生し、14年はインドでモディ首相が、16年には米国トランプ大統領が生まれます。イギリスがEUから離脱したのは16年です。そしてロシアのプーチン大統領が、共産主義から資本主義に大きく舵をきったはずなのに、長い権力者の間に変節してロシア帝国再興のためナショナリズムに突き進みました。
アフガニスタンが典型的な例ですが、中東で進んだはずの民主化革命も元に戻って権威主義国家ばかりに戻っています。アジアにおいても、軍事国家や権威国家に装いを変えた国ばかりが増えて、アメリカが計画した民主主義の輸出はほとんど失敗に終わっています。米国、ソ連が対立していた国家による安全保障が最大の優先事項になりつつあります。
現在言われているのは、世界は3つないし4つの経済圏が世界経済をけん引する姿です。ヨーロッパ圏とアメリカ圏と中国圏の3つか、それにインド圏が加わることができるかどうかです。太平洋の西側に位置する日本は、地理的には中国圏ですが、政治的にはアメリカ圏です。将来は、現在の二枚舌経済を続けられるかどうか難しい問題です。
どちらにしろ、これまでのように経済効率の高い供給網づくりは難しくなります。万一の米中対立の激化に備えて、サブシステムの構築は欠かせませんからコストは高くなります。一極集中の最適化調達システムが難しくなることと、自国とその周辺に製造システムを移動せざるをえなくなる非効率は大きな課題になりそうです。そのためインフレも簡単には収まりそうにありません。
【ひと言】
日本の場合、安倍元首相が北朝鮮、中国、韓国と対立関係にしたため、日本周辺には友好国が台湾だけという異常事態に陥ってます。結局、異常事態にすることで自分の政権基盤は強くなったのでしょうが、日本国民としては米国ばかりに依存する不安定な事態になっています。中国や韓国でビジネスをしている日本国民も多いですから、対立関係を続けることは不利です。自国第一主義を脱却し、相手国にも説得できる有能な政治家を今ほど求められる時代はないです。
人気ブログランキングへ