米国FRBが政策金利の引き上げを実施しました。3月に0.25%、5月に0.5%に続き今回は27年ぶりの0.75%と大幅な上げです。FRB・パウエル議長は、昨年来の物価上昇を一時的現象と読み違えたこともあって、失敗を挽回するため金利の上昇幅もこれまでとは比べものにならいほど大幅です。
米国も物価上昇から国民生活を守るために必死ですが、新興国も資金が逃げ出して金利の高い米国に向かいますから対応策探しに必死です。これまで米国FRBが金利を引き上げる時は、資金移動によって不況が深刻なると言われてきました。
そこで本当に金利上昇の時には不況が起こっているのか過去30年で調べてみました。1994年(当時の金利は3%)から95年(6%)まで上昇した時は、2年後の97年にアジア通貨危機が起こっています。日本では拓銀や山一證券が倒産し、ほぼ世界的な金融危機にまで発展しました。
99年(4.75%)から2000年(6.5%)には、米国発のITバブルが発生した時期です。日本の場合、いつまでもバブル崩壊の清算を進められなくて、97年からぐずぐずの経済危機が続いていた時期です。この時期に日本経済では正規、非正規社員のすみ分け、新自由主義経済の導入が進め、ビジネスの景色がすっかり変わりました。
04年(1%)から06年(5.25%)への引き上げでは、07年にリーマンショックの前触れとなる取付騒ぎがフランスの銀行で発生しました。その後米国で大不況となって世界経済を揺るがす事態が発生します。確かにFRBが政策金利を大幅に引き上げた結果、世界的不況が発生していることは間違いないです。
今回もゼロ金利から始まって、来年には3%を超える金利上昇が避けられない見通しです。しかも06年以降、景気を刺激するための金利引き下げとゼロ金利維持を15年近く続けていますから、景気が急落するマグマは相当程度溜まっているとみられます。
問題は日本経済の行方です。13年の異次元の金融緩和以降、この国の借金は増える一方ですし、経済力はどんどん弱っています。もしかすると、ブラジルやインドネシアといった新興国に比べ不況に対する抵抗力はほとんど変わらないほど低下していると思います。今はもっと弱くなっているか知れませんし、今後ますます日本経済のパイは小さくなりそうです。
そう考えると「落下するナイフは掴むな」の格言通り、この時期無理して起業したり投資するのは危険です。ある程度不況が収まるまでは、資金や計画作りに眼を向けた方がよさそうです。また手元の資金は、インフレや円安で蒸発しないように外貨に移動させておくのも手です。岸田政権がいうように、この期に及んで落下するナイフともいえる株式や投信に投資することだけは止めましょう。
【ひと言】
日本国内ではアベノミクスの評価は曖昧なままで、人によっては掟破りの金融緩和を続ける政策を評価する人さえいます。そんな曖昧なアベノミクスですが、金融市場は急激な円安によって、評価が下されているといった声が聞かれるようになりました。過去の円安とは違って、今の円安はほとんど復元力のない円安ということです。日銀がいくらでもお札を刷れば、日本経済は大丈夫なんてねずみ講まがいの発言が一層の円安につながることになります。じゃぶじゃぶに円を増やせば増やすほど円の価値は下がります。至極あり前の話です。
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