わが国は今年冬以降の電力不足に備え、最大9基の原子力発電所を稼働させると岸田首相が表明しました。福島原発事故の発生をうけ、東日本と西日本の電力融通など不足に対応する方策がこれまで何度か提案されましたが、結局先送りしてきたツケが大変な電力不足を招いています。
政府ばかりではなく、国民の中にも電力が不足しているなら、停止したままの原発を稼働させればよいと考える人は増えているように思います。新しく建設するのとは違い、原発の場合は既存の施設ですからそれほど難しい問題はないと思われています。
ただ誰もが忘れているわけではないでしょうが、日本は20年以上昔から大量の使用済み核燃料が積み上がったままです。一度使用した核燃料を再度使用する“核燃料リサイクル計画”が一度は進められ、原発燃料は過って何度でもグルグル使える夢の燃料とされていました。
その計画が実現不可能ということになり、日本の原発はトイレのないマンションともいわれました。日本国民はどうも「夢の○○」という言葉が好きなようです。その昔、建設用資材として石綿が「夢の材料」と言われたこともあります。現在国が健康被害の補償で大きな負担を強いられているアスベストも昔は「夢の○○」の一つでした。
原発の使用済み燃料の場合、わが国では使用済み燃料の最終処理ができないため、外国の処理施設に依頼するしか今のところ方法はありません。現状のまま発電を再開したとしても、爆発事故を起こした福島の汚染水と同様に溜まるばかり。国民が支払う電力料金は今後ますます上昇しそうです。
このような後日世論な大騒ぎしそうな問題に関して、長く国会議員をしている人はよく知っているはずです。最初はほとんど事前に問題視しないで、身動きができなくなってから慌てるのが日本の政治です。最後は国民にツケが回りますから、政治へは厳しい視線で臨みたいものです。
【ひと言】
日本にはこのように、エネルギーや金融といった国の基幹課題で、あまりにも計画性がないとは思いませんか。国民に原発再開の問題点や財政赤字の中身の説明をしたならば、反対する人が多くなるとでも考えるのか、メリットばかりを説明することに方針が決まっている感じです。デメリットに関しては、ほとんど説明しないで、あやふやなままで押し通そうとする姿勢が目立ちます。その結果がインフレに対し身動きができない、今の日銀の姿が象徴的です。
人気ブログランキングへ