台湾を巡って米中関係は、1950年の朝鮮戦争以来の緊張感に包まれています。台湾が中国領土の一部であることは、米国政府も日本政府も国交正常化の時に確認していること。それでも台湾に肩入れするのは、台湾企業の製造技術が半導体をはじめ中国、米国、日本にも欠かせないからです。
過って半導体製造技術といいますと、1980年代には日本が6割近い世界シェアを握っていました。当時、日本は世界で最も物価も所得も高い国として有名で、メーカーの大手企業は競って中国、台湾、韓国などに製造拠点を移転し、安い労働力を求めて海外製造に走っていた時期です。
その結果半導体製造の中心は、台湾に移ってしまいました。2ナノ4ナノといった超微細半導体の製造は、台湾メーカーのTSMCだけが一手に技術を確立し、製造依頼をしていた日本の半導体メーカーは顧客企業の1社に過ぎなくなりました。
結局日本企業の半導体製造への関りは、東京エレクトロン、信越化学、ディスコといった半導体部品メーカーだけになっています。TSMCにしても日本の部品メーカーがなければ製造はできません。ただ今では、全体の製造技術に関して台湾メーカーを抜きに考えられない時代になっています。
1990年代以降世界の大手製造メーカーは、東アジアの人件費の安い台湾をはじめとする各国で委託製造することが潮流になりました。台湾には世界一の受託会社 台湾鴻海科技集団(ホンハイ)も生まれています。現在台湾の製造会社の技術は、委託先企業よりも先を行っているといわれます。
日本は国会で“技術立国”を宣言するほど製造技術には自信をもっていましたが、あまりに台湾や中国に依存し過ぎてそろそろ技術立国の名称も危うくなっています。国民一人当りの平均賃金は既に韓国に抜かれ、このままでは台湾にも抜かれそうです。
これまで日本というと経済大国と言われてきました。ただ具体的には、金融が強いわけではなく商品取引に優れているわけでもありません。唯一、日本製の製品には世界的信頼のあることが強みです。台湾も中国も、大量生産技術は優れていますが、市場で強みとなる特色があるわけではありません。
今後インフレが各国で広がっても、製品のブランド力はインフレに負けない強い需要があります。国内の人件費も先進国では最も低いレベルに下がっています。インフレが次第に収まってきましたら、製造業に関わるビジネスで起業することもこれからの手です。
【ひと言】
大国から攻撃を受ける立場のウクライナと台湾とを比較すると、台湾はウクライナのように国中を壊される心配はないように思います。中国が台湾に求めているのは、半導体を筆頭にした製造技術のように思います。世界一の製造業アップルでさえ、製造拠点を台湾から米国に移すことを考えるほど、依存が高くなっています。今後、製造の外国に頼り切るのは危険です。
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