日本経済の盛衰を振り返るとき、よく話題になるのが過って7割近いシェアを誇った半導体製造が、今は1割程度にまで落ち込んだ原因は何故だったのかという疑問があります。現在の台湾の地位は、1990年代までは日本の指定席でした。
あの時期日本には、NEC,東芝、日立、富士通など世界的半導体メーカーが目白押しでした。一方、ベル研究所による半導体システムの生まれた米国には、フェアチャイルド、インテル、テキサスインスツルメンツなどが日本勢にシェアを奪われていた時期です。
そこで米国議会は、自動車に続いて半導体での日米貿易戦争を仕掛けてきました。早い話が、現在米国が中国に対して行っている対中国政策と同様の反日キャンペーンです。その結果、バブル経済の崩壊とも重なり日本企業の体力がどんどん落ちていきました。
現在日本政府は、米国の要請に従って対中国向けの経済安保推進法の法案作りを進めています。軍事転用が可能な製品や技術の中国向け輸出を禁止する規制で、対象の柱となるのは半導体製造技術です。日本企業は半導体本体のシェアは大幅に減りましたが、半導体を製造するために欠かせない部品製造の技術では高いシェアを誇っています。
東京エレクトロン、信越化学、アドバンテスト、ディスコ、SCREENなど、日本が誇る世界的な製造装置メーカーです。これらの会社の対中国向け輸出が今回の規制の対象になっています。日本企業も中国企業も米国企業も、製造するためのチェーンを切られるわけですから影響は大きいです。
ただどこの国の企業も、一時的に部品入手がなくて大変ですがそれでお手上げというわけではありません。自前や取引のできる国の技術を使い、何とか製造にこぎ着けるのがこれまでのビジネス市場です。困らせたはずが、逆に自分が売上げ減で困るのがこれまでの製造技術の世界です。
現在の日本経済にとって、半導体製造装置は自動車と並んで日本の輸出事業に残された数少ない花形事業の一つです。中国市場でのビジネスを失うと、売上げの2割、3割は失うことになります。その穴埋めを米国市場でできるかというと無理な話しです。
一方米国と中国との貿易量は、2022年の輸出入合計で6906億ドル(約91兆円)と過去最高を記録しています。日本は米国の対中制裁の片棒を担いでいますが、米国自体は中国からの輸入なくして経済が回らないほど依存度は高いです。
米国は、過って日本企業の半導体本体のシェアを引き下げたように、今度は製造装置のシェアを下げようとしているといった穿った見方をしている人もいます。日本のための経済と防衛の戦略を打ち立てないことには、米国と中国の狭間の中で日本の存在感が薄くなるばかりです。
【ひとり言】
以前の自民党政権の指導者たちは、賛否はあるでしょうが日本の立場をよく理解して大きな誤りはなかったと思います。ところが2000年あたりの世襲議員の首相が続いてから、日本は米国への依存が強くなり国益よりも日米関係を重視するようになりました。日本国民にはそれほど米国を信頼していないのに、自民党だけが米国べったりなのは不思議です。バイデン大統領に肩を抱かれ少女のように笑顔の岸田首相では、現在の日本の難局を乗り切るのは難しい気がします。
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