3月10日、米国ではカルフォルニア州のシリコンバレー銀行(SVB)が経営破綻しました。スタートアップ企業向けの資金調達を拡大させていた銀行で、全米では16番目の資産規模を誇る地方銀行です。
米国経済は、短期金利が長期を上回る逆イールド現象が長期にわたり続いていて、不況到来のサインと言われますが今回の銀行破綻は現実になりつつある証拠かも知れません。
米国は日本と同様、コロナ感染拡大に合わせて大規模な金融緩和を進めてきました。その後緩和の影響でインフレが進行したことで、FRB(連邦準備制度理事会)が金利引き上げを実施したため、中小銀行のなかには急速に経営悪化するところが出ています。
SVBの場合、スタートアップ企業がベンチャーキャピタルから募った調達資金の窓口を担ってきました。22年3月末には1980億ドル(約26兆円)にも達しています。金融緩和で資金が余っていましたから、利益を生みそうなビジネスには投資家が競って資金を提供していました。
一方SVBは、預金の預かり資金が増えますが資金の投資先が米国でも限られています。住宅ローン担保証券などに投資をしてきましたが、昨年からのインフレで全国的に住宅建設は冷え込んでいます。そこにFRBによる金利引上げが直撃しました。
預かり資金に支払う利子が、有価証券から受け取る配当よりも高くなる逆ザヤが発生しました。銀行内部での含み損が膨れ上がり、SVBの自己資本を上回る過小資本の状態になっていました。慌てて債券売却と増資を発表しましたが、預金者には逆効果で貯金引き出しを急増させる結果になりました。いました
米国政府は、SVBのスポンサー探しに協力するとともに、現在の全預金額を連邦預金保険によって保証することを決定しました。NY州では、仮想通貨業界に強いシグネチャーバンクも12日に事業停止が公表され、SVB同様に預金は保証されるようです。
問題は日本において同じような中小銀行の破綻が起きた時、日本政府なり日銀が穏便に対処できるかどうかです。日本経済への影響の大きさを測るメージャーの役割は、証券取引による平均株価の推移をみるとよく分かります。米国NYダウは、8日―58ドル、9日-543ドル、10日345ドル、13日―90ドルです。
日本は、9日+178円、10日-479円、13日-311円、14日-610円と火元でもないのに米国以上の高い下げ幅になっています。これはリーマンショック以降経験していることで、震源地の米国か遠く離れている日本に大きな影響がでます。
SVBの場合破綻の直接の原因は、ムーディーズからの格付け引き下げ通告を受け対応策を公表したことで、SNSを通じ広く経営不安が広がりました。多分SNSによる情報の流れが、金融不安を引き起こした初めてのケースになると思われます。
日本の場合も、国債の格付けが下げられる不安を抱えています。国債が下がると銀行の格付けにも影響が及びます。しかも日本の財政事情は、銀行への取り付け騒ぎに対応できるほどの余裕はありません。たいへんな問題に発展する可能性があります。
【ひとり言】
財政に余裕が必要なのは、大地震など自然災害、感染症の大流行、エネルギー危機など、国を挙げての大問題が発生したときのために、身動きの取れない事態を避ける過度の借金をしない教えがありました。それをぶち壊したのが過剰な金融緩和を進めたアベノミクスです。当人は亡くなりましたが、それを支えた人たちはどんな心境なんでしょうか。
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