米国で2つの地方銀行が破綻、その後スイスの大手銀行へ飛び火した今回の金融騒動。どちらも大火になる前に、ボヤ程度で米国とスイス政府とが鎮火させました。これで金融危機の心配は遠退いたと考えるか、依然火種は残っていると考えるか、とても微妙なところにきてます。
今回の金融騒動の原因は、各国政府が低金利政策をとって景気刺激を行っている時に、コロナ感染とウクライナ戦争とが起きたためです。世界規模でインフレが起き、各国中央銀行は金利引上げの対応を迫られました。米国の地銀の破綻は、貸出し金利と国の政策金利との逆ザヤによるものです。
ここで世界的な金融不安が発生し、欧州のクレディスイスは以前からの経営不安によって、株安と預金流出が起きて身動きがとれなくなりました。ただ金融大国スイスを代表する第二位の銀行ですから、政府は第一位のUBSによる買収のカタチで決着を進めました。
そのためクレディスイスの株主は一定の保護を受ける反面、株主の次に企業責任の重いAT1債の2.2兆円が紙切れになります。劣後債、普通債は保護の対象です。今は、クレディスイスのAT1債が組み込まれている投資信託に売り圧力がかかっています。
同時に、他の大手銀行が発行しているAT1債にも手放す動きが進んでいます。多くの金融商品が低金利だったインフレ前に、AT1債は銀行の自己資本に算入できる債券だったことで金利も高く、大半は欧州において積極的に導入された経緯がありました。
経済メディアからの情報では、大体このあたりが今置かれている金融市場の状況です。米国においては、破綻した銀行に預金していた人の資金はほぼ全額保証されます。ただどこの国では、銀行の貸出金利と中央銀行からの資金の金利との間は逆ザヤになっていて、どこの国の銀行も経営が厳しいことに変わりはありません。
AT1債の場合日本でも、3メガバンクを中心に3兆6千億円程度発行されているようです。日本から売り急ぐ可能性は低いと思われますが、海外で騒ぎが大きくなると釣られて国内でも問題になることは考えられます。個々の銀行をみると脆弱な銀行は少なくないですが、その影響力は小さいと思われます。
それより日本の場合は、日本銀行が赤字国債の半分以上を抱え、上場企業の株式も間接的に大量に保有していますから絶対安全という存在ではありません。以前から海外ファンドによる国債の売り浴びせを受けていましたから、最も危ない存在というと日銀ということになりそうです。
【ひとり言】
08年リーマンショックが起きた背景には、住宅ローンの一種サブプライムローンの過剰貸出しがありました。97年のアジア金融危機は、タイ、韓国など当時の新興国の多額債務が、米国の金利上昇によって支払い不能に陥ったためです。過去の経験からいうと、同じ誤りを世界各国が犯すことはほとんどなく、欧州発のAT1債の可能性が高いです。日銀の債務履行ということになると、アベノミクスの責任は重いです。
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