日本一営業台数の多いタクシー会社 第一交通産業の創業者黒土始(くろつちはじめ)さんが101歳で亡くなりました。一時は経営から離れましたが、その後100歳まで現役を貫いた人です。この人、タクシー会社の社長でありながら自動車免許証を持たなかったことで有名でした。
戦前は国鉄などで働き、戦後福岡で砂糖販売など小さな事業を手掛けた後でのタクシー事業への参入です。39歳の時、門司において5台のタクシーで始めた事業ですが、他の業績不振会社の吸収合併を繰り返した結果、現在は約8200台の営業車を保有しています。
過去に4回自動車免許を取ろうと教習所通いをしましたが、仕事が忙しく等々免許証取るまで通いきれなくて終わったようです。その代わりにお客さん目線でタクシー会社の経営に携わることによって、会社を売上げ1000億円の上場企業にまで成長させることができました。
お客さん目線による経営というと、アップルのスティーブ・ジョブズが有名です。ジョブスもパソコン会社の創業当初は技術者として、システム開発に関わっていました。ただ技術の進歩に伴って開発現場からは離れ、もっぱらお客さん目線で使いやすいパソコンやiphoneの開発を指揮しました。
会社の創業時期には、起業家は業界地図のなかで自社のポジションを探して、夢中で開発作業に専念します。この時期、開発者目線で集客を考えなければ仕事になりません。ところが市場でのポジションを獲得した後は、お客さん視線で自社を客観的に見ることができないと成長はムリです。
ところが一般的企業では、創業者はいつまでも開発者視線から抜け出すことができないのが現実です。賢い経営者なら、お客さん視線を獲得するためモニターシステムやコンサルタントに依頼する方法を考えます。多分この手法に気付いたことで、第一交通産業の黒土さんは100歳まで現役を続けられました。
多くの起業家はそこそこ上手く事業を軌道に乗せることができても、その後の180度違う視点から自分の事業をみれずに失敗します。自分の事業は自分が一番知っている自負は、お客さんのニーズからは一番遠いところの発想です。お金を払ってくれるのは、自分ではなくお客さんの側であることを知ることです。
【ひとり言】
経営の神さまと云われた松下幸之助は、相当の高齢になっても松下電器産業(現パナソニック)が売り出す家電製品に関して自分で新製品に触れて販売の可否を判断していました。ビデオやレンジなどに触れて、「重すぎないか」「操作が難し過ぎないか」など指摘されると発売を延期して部品を減らしたり、表示を変えたと云われます。松下がマネシタと云われたように、早く売り出すことよりも使い勝手のよさを第一に考えたことで、お客さんの熱い支持が得ていました。
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