日本経済がそこそこ順調だった1990年代後半までなら、長年勤めた会社を辞めて起業する人の6人に1人くらいは学習塾で開業をしていました。現代のようにITの普及はまだ進んでいなくて、学校の授業も過去とそれほど変わっていない時代のことです。
学習塾経営は、学校での成績や進学校合格の実績によって白黒のはっきりする世界。対象とするのは10代の子供が相手ですが、実際に通う塾の選択をするのはその両親です。会社を辞めたときの退職金で2、3年の生活費をまかなうことができたら、その間に受験生の両親を説得できる実績を残すことで塾経営は軌道にのる仕組みでした。
その後学校の授業にタブレットが導入され、ネット環境が整備されるに従って子供の教育環境も大きく変化しました。教育関係者としては想像を絶する速度で少子化は進んでいますし、家庭が支出する教育費も減らされるようになりました。今は学校推薦制度が普及しているため、受験制度だけに合わせた学習は人気がなくなっています。
過っての学習塾は、受験のため一心に正解だけを求める学習をすることがこの世界の王道でした。この王道を進むだけなら退職組の起業した学習塾でも十分利益は上がりました。ところがIT技術の進歩と少子化とが進んだことで、正解を求めるよりも実社会に巣立ってからも役立つ能力を求める学習が重視されます。
今では小学生の頃から、答えを求めるより問題を作ることに重点を置いた学習まで進歩しています。そのため駅周辺に立ち並ぶ学習塾の看板をみても、大半が全国展開をしている塾チェーンか地域に根差したローカルブランドの学習塾ばかりになっています。個人で経営する塾はほとんどが姿を消してしまいました。
もう個人経営による学習塾起業はムリかといいますと、そうとも云えない動きがあります。今多いのは、NPO法人が運営する低授業料の学習塾が増えはじめています。ネットを利用した学習アプリと対面式の個別指導の授業とを組み合わせ、大きな看板こそ出していないもののそこそこ生徒を集めて低所得層向けの塾として活動しています。
また書道や算盤などの教室を運営しながら、ここでもネット利用の塾を運営しているケースもあります。従来からのスタイルを踏襲しているのは大半が大手チェーン経営です。個人経営の塾が生徒を集めているのは、今の時代に合った学校の成績よりも本人の希望をじっくり聞いてくれる、人間教育に特化した塾が注目されています。
【ひとり言】
今はIT技術が各段に進歩しているのに合わせて、教育も大きく変化しています。つい先日まで、プログラミング技術を身に着けることで高収入の仕事に就くことができると考えられてきました。ところがプログラミングはchatGPTによって簡単に作成できる日が目の前です。まもなくこの技術の希少価値はその座から滑り落そうです。他にも、医師や弁護士などの希少性もchatGPTのサポートによって薄らいできそうです。今後は、塾の学習目的が問われることになりそうです。
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