起業を考える人にとって大きな壁となってきたのが「経営者保証」の問題。開業当初の初期費用は自分で用意する人がほとんどですが、開業後に必要な資金の大半は起業家が金融機関から借りることになります。初期費用でまかなえるのは精々1、2年まででその後の運転資金など借金に頼ります。
このようなとき現在は、金融機関が社長の保有する資産などをまとめて経営者保証というカタチで住宅や自動車などを担保にしています。中小企業が融資を受けるとき約7割強の社長がこの保証を付けています。この保証のために、自分が引退したくても引き継ぐ人はいない場合は廃業するのが現実です。
金融機関は法人としての会社と社長個人の双方に保証を設定しています。この問題は日本での事業にとって長いこと課題とされてきました。先進国でこれほど金融機関の保護ばかり厚くするような制度をもっている国はないと云われています。借りる側から云わせますと、金融機関はほとんどリスクを負わないで金を貸すことになります。
本来なら、金融機関側にも会社や経営者を審査するノウハウがあって、資金を貸すにあたって自前のリスクを取って貸すべきです。金融機関自身も、わが国の長引く低金利政策のもと借り手不在の現状に経営は厳しさが増しています。中小企業向け融資には少しでも前向きに取り組みたいところです。
そんななか、北洋銀行や福岡銀行、八十二銀行、紀陽銀行など10行を超える地方銀行は、原則として経営者保証を求めない融資に乗り出しています。自主的に個別の地銀の判断で、これまでの融資の慣行を踏襲しないカタチで新たな融資制度を導入しています。
また財務省、経産省、金融庁は「経営者保証改革プログラムを作成し、今年3月から創業5年以内の企業の場合は経営者保証を外すように金融機関に求めています。4月からは、経営者保証を求める場合に保証の必要性を説明する義務を課しています。安易に保証取る慣行を是正する動きの一環です。
この改革プログラムでは24年4月から、経営者保証の解除を選択できる新たな信用保証制度の創設も視野に入れていると云われます。中小企業向け融資制度が大きな転換点を迎えることにもなりそうです。これまで幾度となく論議されてきた経営者保証ですが、やっと切り替わることになるかも知れません。
【ひとり言】
銀行業界にとって経営者保証は一種の既得権益。こんな不平等な資金の貸借契約が今も生きているとは一般の人に信じられないでしょうが、日本では保証人制度などと共に長く生き抜いてきました。この不平等を歓迎する人の反対側にが、身ぐるみ剥がれて厳しい人生を歩んでいる人も多数います。日本が変わらないと世界から置いていかれると云われながら、ズルズルと続きそうなのがこの経営者保証。はっきりいってうんざりしています。
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