日本では今後、企業倒産が急激に増える可能性のあることをこれまでも指摘してきました。コロナ禍が大流行したこともあって政府による補助金や金融機関の返済先送りが実施されてきたため、この救済が終了するに従って倒産も徐々に増えてくると予想されます。そのうえ最近は、「物価高倒産」という聞き慣れない言葉まで飛び出しています。
この20年以上に渡り、ほとんど物価高を経験してない日本ではまったく馴染みがありませんでしたが、物価高倒産は原材料の仕入れ値の急上昇に価格引上げが追い付かないことで起こります。これまで企業倒産というと、多くは販売不振によって利益が出るまで売れないことが原因でした。
物価高倒産は商品やサービスが最初から売れないわけではありません。売れていたモノが、ある時から仕入れ価格が上昇したことによって、販売価格を引き上げなければ利益が出なくなります。そのため慌てて販売価格引き上げに踏み切りますが、今度は価格がお客さんの想定よりも高いために売れなくなります。
7 このような現象が2022年度からわが国では本格的に始まり、昨年度は過去最高の463件も倒産が発生しました。コロナ禍初期の20年7~9月期と22年10~12月期との間の価格上昇率を比較しますと、米国は48.5%、欧州は58.1%上昇しているのに対し、日本は20.3%しか上げていませんでした。
日本の企業物価は10%台まで上昇が続いていましたから、明らかに小売価格への価格転嫁は遅れていました。現在の日本国民の購買力は米欧各国と比べますと明らかに弱いです。しかも日銀の3月のアンケいかもート調査によりますと、価格の安いことを重視する消費者が57.7%と半数以上もいますから、事業者としては経験したことのない難題を抱えています。
しかもこれからは、人手不足が深刻になるのと従業員に対する賃金上昇を求められます。6月に入ると電力料金の上昇も予定されています。企業経営者にとって、この20年以上に渡ってまったく経験していないことが次々と起きます。ただこの厳しい環境は、日本で事業をする以上はどこの経営者も取り組まなければいけない課題です。
日本ではインフレは起きないと信じていた人が大勢いました。そのためコスト削減をして、少しでも安い製品づくりや仕入れる努力が求められてきました。今環境は大きく変わって、値上げしても売れる製品づくりや仕入れが求められる時代です。早く頭を切り替え、高く売る方法を考えることが必要です。
【ひとり言】
これまで何度か、経済の仕組みが大きく切り替わるゲームチェンジをみてきています。古くは1985年プラザ合意をきっかけに日本でバブル経済が起き、91年以降にはバブルが弾けました。変化は判りましたが、それがどんな結果を生むかまでは知りませんでした。その後08年にはリーマンショックがあり、以後日本経済はほぼ冬眠状態です。今インフレが始まっており、物価上昇によって新たな経済が生まれます。これは人によってチャンスでもあり、変われない人にはピンチでもあります。
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