コロナ感染拡大によって歪んでいた日常もこのところやっと元に戻りつつあります。2020年春以降は奪い合いになるほど需要の高かったマスクも、現在は完全に沈静化してしまって路上に捨てられているマスクの多さに、3年の月日が過ぎたことに感慨を覚える今日この頃です。
コロナ拡大に伴って、都市部においては料理宅配ビジネスが急激に広がりました。今やウーバーイーツと云いますと知らない人がほとんどないほど、広く知られるビジネスになっています。21年には、この料理宅配ビジネスのわが国での市場規模が7754億円にまで拡大しました。
料理宅配のためには、店舗を構えず調理設備だけのゴーストレストランまで誕生して、市場のさらなる拡大さえ予想させました。ところが昨年から海外勢を中心に宅配業者の撤退が始まっています。このビジネスの日本と海外との違いは、米欧ではコロナと関係なく料理宅配が14,15年頃から始まっていたことです。
日本では、そば屋、中華料理店、ピザ販売などでは以前から宅配ビジネスが定着していました。そこに新たな料理メニューが展開をはじめたのですが、結局は定着が難しかったようです。20社近い宅配事業者がコロナ以降に営業を始めましたが、黒字事業者はウーバーイーツのみ。テレビGMで話題を集めた出前館は一度も黒字になっていません。
現状では、上記2社にウォルトとmenu の4社が残る程度で、その他は営業を続けるのが難しいとみられています。2020年に拡大を始めた料理宅配ビジネスは、22年春あたりがピークでその後急速に減速しています。アジアを含め海外では今も元気なのに、日本だけは急に市場がしぼむメカニズムはとても気になります。
コロナ禍で厳しい規制があった時は、思うように外出することができないため財布にはお金があったので料理宅配を注文する余裕がありました。社会がコロナ前に戻った途端、物価上昇もあり生活費の支出も増えたことで注文する人が減っている気配が強いです。他国に比べ、日本国民の消費力の弱さと料理宅配の撤退には因果関係があるような気がします。
よく日本が弱っていると云われます。たいへんな借金を抱える日本政府が弱っているのは確かですが、それ以上に日本国民の購買力が弱っています。国民の総収入に対して、50%近くの税金や公的負担があるのですから当然です。一方で、米国と同じように新自由主義による不安定な雇用で働いている人が30%を超えます。
これでは国民全体の消費力が弱いのは当然です。その結果、国民間での収入格差が大きくなっていますし、住んでいる地域による格差も広がっています。これから新たにビジネスを始めるに当たっては、この地域格差をよく調べ事前に購買力を認識したうえで始めないとたいへんな失敗につながります。
【ひとり言】
何度も指摘しますが、1990年代半ばには世界全体のGDPの18%まで占めていた日本経済が、今は4%台にまで短期間に縮小しています。本来なら一国が傾くくらいの大問題ですが、まるで何もなかったかのように世界に向け経済大国を演じています。ビジネスを展開する人が、日本の現実を無視していてはたいへんな失敗を招くことになります。この国のパイは想像以上に小さくなっています。ここを計算に入れたうえで事業に向かうことです。
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