世界の自動車市場は、エンジン車から電気自動車(EV)への切り替わりにより市場は直ぐにも塗り替わると思われてきました。テスラやBYDなどが世界を席巻する日も遠くはないと信じられていました。ところが現実はそんな単純な話しではなさそうです。
テスラの23年売上高は、前年同期比19%増の967億7300万ドル(約14兆3800億円)で過去最高を記録しました。ただ思いもしない問題が表面化した1年です。EVにとっては大きな市場であるレンタカー業界から購入キャンセルが相次いで起こったこと。
EVの性能は目まぐるしく向上しています。特にバッテリー機能の向上は著しく、1、2年前のEVは中古車市場でまったく魅力がありません。レンタカーや社用車は短期間で入れ替えますから、中古車市場で売れないと買い替えのモデルが壊れてしまいます。
また自動車市場を大きく塗り替えると思われた中国車の台頭ですが、欧米では中国の地政学的脅威が壁となり思うように売れ行きが伸びていません。EVの性能はテスラと遜色のないレベルまで向上していますが、販売網とメンテナンス仕組みが普及を阻んでいます。
2050年までにはエンジン車からEVに切り替わるとされてきた自動車業界ですが、24年になってハイブリッド車が見直される事態が起こっています。世界の経済は、日本のマスコミが報じるほど単純な世界ではないということです。
日本では二項対立を煽って、白黒をはっきりつけたがる修正があります。非常に単純で分かりやすく、2001年の小泉純一郎内閣の誕生以降は敵と味方をはっきりさせることに熱心です。ただこの単純で幼稚な手法では何も解決できないことに気づいてきました。
エンジンからEVへの切り替えと同じで、もっと複雑な思考を働かせないと多くの人が納得する解決には近づけません。日本はその転機にきているように思います。今の二項対立を煽ることで国民の支持を得てきた政治も経済も、難しい局面に立っています。
1998年日産自動車にフランスから舞い降りたカルロス・ゴーンが、コストカットによって救世主と崇めたてられたように、時代の変化によって人の考え方も変わります。今でも経費節減が好きな経営者はいますが、時代が求めるニーズから嫌われることは確かです。この変化に対応できない会社は消えてゆき、新たな会社が生まれるのは人間社会が生き延びるための知恵の働きです。
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