昨年、わが国での休業、廃業、解散した会社数は5万社を超えました。現在比較が可能な2013年以降では最悪の企業倒産数です。23年にはコロナ感染に対する補助金がなくなり、仕入れ値や人件費も上昇して経営環境が悪化した一年でした。
コロナ感染が始まった20年も大量の企業倒産がありましたが、その数字を上回る倒産を昨年は記録しています。特に飲食業や宿泊業の倒産件数が多く、続いて建設、小売りと続いています。どの業種も雇用者の多い業種で人手不足は深刻です。
倒産した会社のほぼ半数は赤字経営の慢性化していた会社です。いつ事業を止めてもおかしくない会社ばかり。また黒字経営を続けていた会社であっても、経営者の年齢が70歳を超えている場合の4割は、将来を見据えて昨年中に廃業に踏み切っています。
今後日銀が金利上昇を押し進めますと、休業や廃業はますます増えることが予想されます。赤字企業にとって利払い金は当初少額ですが、時間が経つにつれ前年比でどんどん増えていきます。それなら早めに廃業した方が損失が少なくて済む計算も働いているようです。
近年経営が急に厳しくなった会社の特徴は、これまで堅実経営を売りに続けてきた会社。日本に多い「社長と社員が何とか食っていける会社」がインフレ下で行き詰るケースが目立っています。
物価と金利の上昇が始まった日本においては、他社より稼ぐ力のない会社に淘汰が始まっています。2000年以降このぬるま湯会社は日本では最適経営と言われましたが、ひとたび経済の歯車が動きだしますと価格引き上げ能力がないと振り落とされます。
逆に言いますと、この経済の変化に対応できる会社には生きやすい環境といえます。新たな起業も含めて、会社の入れ替わりが始まっていると認識した方がよさそうです。インフレに対応できる能力のある個人や会社にとっては、20年以上に渡って待っていた時代の到来です。
今後日本経済にとって問題となりそうなのが、円安に起因する物価上昇です。円安不況といっていいと思います。わが国は、1985年のプラザ合意以降長い間の円高が問題で、円高不況という言葉が定着していました。1ドル=240円が数年の間に120円まで円高が進みましたからこれは深刻な問題でした。ただ今は問題の本質が変化し、1ドル=150円台の円安が問題になってます。頭を切り替えないと、いつまでも円高を恐れていては大きな失敗の原因になります。
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