新会社法の成立で50年ぶりに商法改正が行われるが、一歩先に起業家注目の民法上の組合組織LLPが8月1日にスタートする。
一般にわが国では、組合組織に対する認識が低く、農協や漁協などでその名を耳にする程度で、ビジネスを行う会社組織とはまるで違う組織を連想しがち。会社の従業員の視点から見ると、組合組織は分かりづらいが、経営者の視点から見ると個人なり企業が資金を出資して事業を行う組織としてよく知られている。同業者が集まって工業団地で製品製造を行う組合や、同業会社が広報や親睦活動を行う組合など、目を凝らすと時々組合組織は見かける。
これら従来の組合は、発生した負債に関して無限責任であったのに対し、LLPでは有限責任である点が大きな特色。LLP設立にあたって出資した人は、その出資額までしか責任を負わない。しかも、利益に対する課税にあたっては、組合への課税はなく、出資者だけに課税されるパススルー課税なので、会社組織より断然有利なため注目されている。
米国では、この10年間で約80万社のLLPが誕生しており、スピルバーグの映画制作会社「ドリームワークス」もLLPによって設立されていることは有名。わが国ではベストセラー「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の著者で公認会計士の山田真哉さんが、企業セミナーやコンサルティングの運営組合としてLLP第一号を狙っている。LLPでは弁護士、会計士、司法書士など9業種について、責任の重さを出資の額とすることが適当でないとして組合の結成を認めていないため、本業の企業会計ではなくコンサルティングでの組合作りとなった。また、宝くじや競馬など投機目的の6業種も除外されている。
会社を数人でスピンアウトしての起業、有名人の名声・ノウハウを活用しての起業、スペシャリストが集まっての起業など、共同出資による事業立ち上げにLLPは利用が広がる予感がする。