現在、世界一の小売業というとアマゾンを思い浮かべる人は多いと思います。実店舗と違い他人のふんどしで相撲を取るネット販売ですから、金額ベースならいくらでも膨らむと思いがちです。ところが実際は、実店舗販売のウォルマートの方がアマゾンよりも多いです。
2023年の場合、当時の1ドル=140円で計算しますと、アマゾンは5747億ドルで約81兆円。ウォルマートは6113億ドルで約85兆円とけっこう差は開いています。そして重要なのが、ウォルマートは一早く経営方針を切り替えこれまでの株主第一主義から現場第一主義に切り替えていること。
現在の米国の経済状況はといいますと、コロナ禍以降景気を刺激するため大量のドルを市場に発行しました。このドルを市場から吸収するかどうか、FRBは金利引き下げをするかどうかで悩んでいます。現状では当初の予想以上に米国経済の需要は強く、金利引き下げは延び延びになってます。
そんななかウォルマートは、株主よりも現場従業員を第一に優遇する経営へと突き進みました。単に賃金引上げばかりでなく、待遇全般に力を入れ生産性向上に結びつけようとしてます。過ってアップルも会社の成長期には、株式配当をゼロにして研究開発と従業員優遇にウェートを入れていました。
日本企業でもサントリーや味の素、出光興産などは、大家族主義経営の大手企業として以前は注目を集めた時期もありました。米国では、家族主義経営の企業ほど成長力が高いとデータもでているようです。新自由主義経済の米国で家族主義というのも、何か不思議な気持ちがします。
風向きが大きく変わるきっかけになったのは、航空機製造のボーイングが株主第一主義の経営を続けて、会社が不振にあえいでいることにあります。徹底的な合理化を大幅に進めた結果、飛行中にドアが外れ落ちたり墜落事故が相次いだり、現場を無視した経営で会社は危機に陥っています。
日本にいて米国の家族主義経営と言われてもピンときませんが、あまりに株主優先の経営を続けたため従業員も顧客もうんざりした気配を感じています。先祖返りで日本においても、現場第一主義が見直される可能性もありそうです。小企業なら、取り組みやすい経営手法かも知れません。
最近は、企業の株主第一主義に疑問を呈する人が増えている反面、企業価値を売価と同じ1程度には保つため株主を増やそうとする会社も増えています。これはとても難しい問題です。ただ企業業績が高くなっているならどちらも解決する問題なので、現場第一主義は避けて通れません。大事なことは、会社が抱えている問題を我がこととして考える人が一人でも多いこと。同じ仕事をするなら、皆が同じ目標に向かって身体と頭をつかって仕事する仕組みを作ることです。
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