営業を止めた飲食店の厨房機器を買い取り、それを開業する店舗に販売するテンポスHDが注目を集めています。創業は1997年のバブル崩壊でわが国経済が身動きの取れなかった時代。ほとんど開業する人のいなかった時期で後厨房機器の買い取り会社が各地に誕生しました。
99年には事業会社テンポスバスターが「ニュービジネス大賞」を受賞。厨房機器の再生ビジネスに一早く目をつけ、日本経済が真っ暗闇のなかでその後次々に誕生する再生ビジネスに先鞭をつけた会社の一つです。開業から5年後の02年にはやくも上場を果たしています。
この会社は話題作りが好きで、子供服や子供用品のリサイクル店を開業したり、店舗用インテリア家具の輸入販売、ダイヤのリサイクル販売など次々と新規事業に着手しては廃業を繰り返しています。その中で「ステーキのあさくま」との提携、買収は成功した一つ。
また創業者の森下篤史氏とエリアマネージャー7人とが社長椅子争奪戦もけっこう話題を集めました。08年には森下氏が株式投資に失敗して担保のテンポス株が売いだされそうになったときは、ネットの掲示板で大きな話題になりました。今と違い社長の公私混同が大手を振っていた最後の時期です。
この時代、開業レベルの高いデジタルビジネスでの起業は難しいけれど、厨房機器の再生ビジネスなら自分にもできたかもといった負け惜しみ根性が起業の世界にはありました。森下氏は脱サラによる起業をした人ですから、多くの一山当てよう組には羨望もつよかったです。
今テンポスが取り組んでいるのは、全国に250社近くある中古厨房機器取り扱い会社との事業提携。中小飲食店向けに安価の経営のコンサルティング事業。そして人材不足に対応するためにミャンマーでの日本語学校の開設。飲食店に日本語のできるミャンマー人を送り込む事業です。
今後、飲食店向け金融ビジネスまで囲い込むことができますと、飲食店事業の川上から川下までテンポスモデルが完成することにもなります。27年かけ日本に飲食店サポートビジネスの大きな組織を作っている訳で、今後も元気に頑張ってもらいたいものです。
起業した人のなかには2種類のタイプがあり、当初考えたビジネスで成長することを考える人と、起業した事業からどんどん多角的に拡大することを考えるタイプです。拡大を考える人は色々手をだして本体まで失敗する人がいます。ただ大化けするのもこのタイプで、ユニクロの柳井さんや楽天の三木谷さんなどが典型です。森下さんもこのタイプと思われます。まだまだ飲食店のニーズを掘り起こすことを考えているようです。
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