全国で「ドン・キホーテ」を展開しているパン・パシフィック・インターナショナルは、この国で5社目となる売上高2兆円の大台に達しました。また35期連続の増収増益を記録していますから、ドンキは日本の代表する小売店の一社です。
インバウンドで日本を訪れる外国人の人たちにも、この雑然と商品が並べられた店舗はたいへん人気です。ドンキのビジネススタイルは一般には「個店経営」と呼ばれるユニークな手法です。この営業方法を考えてみたいと思います。
一般に全国で数百店と多店舗戦略を採用している大企業の多くは、チェーンストア方式を採用しています。本部が販売マニュアルや接客マニュアルなどを作成し、販売スタッフはそのマニュアルに沿ったカタチで接客営業を行っています。
ドンキの場合はマニュアルを採用していません。その代わり店舗を運営しているのは「メイト」と呼ばれるパートやバイトの人たち。商品調達、商品配置、価格決定までもこのメイトが主導しています。接客の現場主導でお客さんの要望を即反映させます。
このメイトと本社とをつなぐのが各地域の支社長で、今は全国に100人を超える人たちが予算配分と店舗管理を行っています。効率第一の経営は行わず、徹底した現場主義に徹しているところがドンキのビジネスの特徴となっています。
ドンキのビジネスのもう一つの特徴は、EC(電子商取引)とは競合しないこと。商品単価の平均は300円程度の低価格品が主流なため、送料がかかってはお客さんに逃げられるビジネス。来店するお客さんだけを相手にする点が強みです。
これまで個店経営は、大きな可能性がありながらあまり話題になることはありませんでした。米国初のマーケティングに依存した販売方とは真逆の手法だからです。手間もかかるし、利幅も小さなビジネスです。それでも2兆円企業ですからこれからの課題にはなりそうです。
個店経営に似たようなビジネスでは、関東で食品スーパーをしているヤオコーが徹底的にパートさんの生活の知恵を採用して事業を拡大しています。こちらも35期連続の増収増益です。パートやバイトを戦力にしているビジネスは強いです。お客さんに最も近い存在がパートやバイトですから、お客さんの希望に沿った店づくりはやはり強いです。
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